episode２０ ページ21
今までに無いくらいの集中力のお陰か、期限までに無事に終わることができた。
といっても、それは私が預かった仕事だけで、土方はまだ書類とにらめっこしている。
あ「土方さん、出来たのはどうしましょうか」
土「こっち持ってきてくれ」
あ「はい」
よいしょ、と言いながら立ち上がったは良いが、座りっぱなしだったのと睡魔で自分の足を自分で蹴るという驚きのミスをおかしてしまった。
見事に身体はバランスを崩し前方へと倒れていく。
人は危機が迫ると、まるで事がスローモーションに感じると言うが、まさか体験するはめになるとは。
思わず目を閉じて訪れる衝撃を覚悟する。
土「うおっ！」
あ「……」
知っている煙草の匂いと、目の前にあるのが男性特有の胸板がであると気付き、ようやく自分が土方に抱きついていることを知った私は、柄にもなく慌てふためいた。
あ「うわぁぁぁ！す、すみません！！」
土「い、いや……大丈夫だ！怪我ねぇか？」
あ「土方さんのお陰でなんとも……ほんとにすみません！」
土「気にするな、俺の方こそ疲れてるのに手伝わせて悪かったな」
あ「そんなこと無いですよ！私の不注意ですから！」
土「いや、俺の力不足だ」
互いに自分に非があること曲げようとせず、途中から何だかおかしくなって笑いあった。
あ「今回はお互い様、ということで」
土「あぁ、そうだな」
あ「それじゃ、私は部屋に戻りますね」
土「ありがとな、助かった」
あ「土方さんがお礼言うなんて、らしくないですよ？明日は槍でも降るかもしれませんね」
土「うるせーよ」
あ「すみません」
また二人で笑う。この時間がとても心地良いが、そろそろ寝なければ明日に響いてしまう。
あ「お休みなさい、土方さん」
土「あぁ」
名残惜しいが、私は土方の部屋を後にした。
土方も１人になった後、書類を整頓し山崎が取りやすいようにと、机の上に放置、ではなく置いておくことにした。
それからは着替え布団を敷き眠りについた。
その頃私は、自室で不可抗力とはいえ土方に抱きついてしまったことに顔を赤くし、胸をドキドキさせていた。
なぜドキドキするのか。
私がその意味を理解するのは、もう少し先のお話だ
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作者名：暇人の甘党 | 作成日時：2016年3月16日 16時
