episode19 ページ20
ハンガーにかけてある部屋着に着替えながら、私は昼間の件で頭を抱えていた。
あの時は銀時に気付かれそうで内心ではかなり焦った。木刀がないと言っていたが、初めから上手いこと隠し持っていた。気づかないフリをしていたけど、嫌な予感はしていた。
そんなに顔に出ていたかな?白夜叉として名を馳せていた彼だ。隠していても目に見えない何かを敏感に感じるのかもしれない。
まぁ、それはこれからは気を付けていくとして、最も気になることが一つ。
影の存在。
桂の言うことを信じるのも問題だけど、噂は気になる。
桂の言うとおり、確かに影は昔に1人残らず粛清され生存者は誰もいない。
──報告書通りであれば。
もし、桂が言う噂が真実なら、影を名乗る者を殺めている輩がもう一人居ることになる。これは早急に対処が必要だ。幸い副長補佐の肩書きがあることだし、資料室には自由に行き来する事が可能だ。しらみ潰しに探して一手一手、確実に進めなければ。
一族の名を汚す者は誰だろうと消す。
一族を皆殺しにした新選組を潰し、裏で新選組を手引きした黒幕を表に引きずり出す。そして
──必ずこの手で復讐を。
幸いにも最近は土方からの疑いの目は一切無いし、日頃の行いで信用も得たはず。彼からの疑いがなくなった今、新選組の終わりも近い。
ニヤリと口角が上がっていく。
どこか胸が痛んだ気がしたが、そんなこともすぐに気にならなくなった。
誰がなんと言おうと、どうなろうと目的は果たす。
それが、私の唯一の存在意義なのだから。
着替え終わった頃に、土方の部屋がある壁からトントンッと音が鳴った。
あ「何だろう?」
私はまた復讐心に蓋をして、明るいお人好しという人物像の仮面を付けて副長室へと向かう。
あ「何かありましたか?」
土「山崎が至急の書類を持ってきやがった。さすがに一人で今日中にはやりきれなくてな」
あ「これは……」
土「巷では騒ぎになってる辻斬り報告書だ。何でも、きな臭ぇ奴が動いているらしくてな」
あ「……」
土「どうした?」
あ「あ、いえ。何でも」
あれだけ難航してたのに、これだけの成果を一夜で?どういう事。
土「これまでの報告書を含めて日付順に並べてくれ」
な「はい!お任せを」
モヤモヤを抱えながら、小さな机を出して作業を始める。夜遅い事もあり、お互いに眠気と戦いながら書類を終わらせる事にただ集中した。
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作者名:暇人の甘党 | 作成日時:2016年3月16日 16時