1:Hello. ページ2
上下左右あちこちから生えている、摩訶不思議な森。
一際異彩を放つ、ひとつの扉。扉だけがぽつんとある。どこぞの青いネコ型ロボットよろしくななんちゃらドアにも思えるがそこはスルーしてほしい。
どこにも繋がっていなそうなその扉の中で、ほんの5分前にこれまた摩訶不思議な出来事が起きていた。
A「・・・えー・・・。
使い魔は別に必要としてないんだけどな・・・」
彼女の名前はAA。
この家の居住者で、唯一の魔女だ。
扉だけのその向こう側、いわゆる家の中。
今日も今日とて昼過ぎに起きたAは目を覚まして依頼されていた薬を合成しようとしていたのだが、家の1階で不審な音が聞こえたのだ。
爆発音にしては柔らかな、攻撃性の低い音。それでいてはっきりと聞こえたものだから、Aは面倒くさそうにのそりと起き上がって1階に向かった。
まあ逆恨みされたり魔法を盗もうとする不届きな輩が不法侵入してくるのは珍しくはない・・・のだが。
A「たぬきにリス・・・犬に狐。
まだ子ども・・・召喚魔法なんて自動発動するようにしてたっけ」
計4匹。
気絶しているらしく、家の床にこてんと転がっている子動物達。
見るとどこかしら怪我をしているようだ。
これがもし家もしくは森へ何かしらの危害を加えに来た魔物やら魔界の住人ならば、Aは速攻で強制的に転移魔法を発動していただろう。
ところが。
どっこい。
悪意どころか、4匹ともその体内に魔力すら感じ取れない。
そこでAは考えた。
寝起きのあまり働かない頭を使って考えた。
一応言っておくが、寝起き早々に起きた出来事。まだ何も口にしていない寝起きの時ほど考えが億劫になる。
A「・・・カールハインツの差し金・・・?
・・・いや、それにしては・・・・・・」
「っ・・・」
A「・・・あー。
とりあえず治療するか。・・・回復魔法は・・・・・・やめとこ」
魔力を宿していない純動物に魔法を使ってもしもの事があったら目覚めが悪い。まあAの場合、実験と称してやりそうだが。
寝ている子動物に対してサディスティック心をチラつかせるような加虐心は持ち合わせていないのだ。
少し苦しそうに動いたたぬきを見て、Aは4匹をそっと抱き上げて3階に向かった。
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作者名:暇犬 | 作成日時:2018年5月29日 22時