代わり ページ49
「あ、あの…!」
じゃ、と小さく呟いてその場を立ち去ろうとするレイラの背に辿々しいミツルの声がかかる。
何を言うでもなく振り向いたレイラに彼は両手を誤魔化すように擦り合わせながら口を開いた。
「その……キルリア達の回復を終えたら家に戻って夕飯なんです。よかったら一緒に……」
「パス……自分の夕飯……用意してるから……」
誘いを遮るようにきっぱりと断り、彼女は今度こそ自室へと歩を進める。
その姿を少し残念そうに見送るミツルは、レイラがふとこちらを振り向いたのに気が付いた。
「家族だけの時間……大事にしろ……」
その言葉がひどく重みを持ったように感じたのはミツルの気のせいなのか、
いや、気のせいでは無い。
レイラの奥底に引っ掛かっている感情が滲み出すものなのだろう。
そんな事は露知らず、
いつの間にか、レイラの立ち去ったロビーでつっ立っているだけになっていたミツルは慌ててカウンターのジョーイへモンスターボールを預けるのだった。
ミツルへの言い訳にも使った夕飯ことカップ焼きそばを平らげ、パートナー全員を部屋に出した状態でレイラは背中からベッドへ倒れ込む。
顔を覗いてきたアーケンとトゲピーの子供組の頭を撫でてやり、気の抜けたような溜め息を漏らす。
「アタシの家族は……手遅れなんだろうな……」
そう呟いた彼女の瞳は無意識にある物へと向けられる。
母からの贈り物、
ルギアを象った少し色褪せてきた時計。
母が生きていたのなら何か変わったのだろうか、
何度そう考えたことか。
天を掴むように垂直に伸ばされた手へと視線を移し、レイラは再び溜め息を漏らした。
と、
気が付くとパートナー全員が彼女を覗き込んでおり、ギャラドスに至ってはその手に擦りよ寄っている。
彼らの瞳から伝わってくる言葉は共通で、
ー自分達では代わりになれない……?
そう言いたげな彼らに何故か鼻の奥がツンと痛くなって、
たまらずレイラは腕を目一杯広げて全員を抱き締めた。
「アンタ達でも……母さんの代わりにはなれない……けど……
母さんでも……アンタ達の代わりにはなれない……
代わりでなくても……良い……
アンタ達はアンタ達として……
アタシの側に……いてほしい」
少しだけ強くなった抱擁に、レイラの上手ではない感情表現が混ざっていたのだろう。
先程の言葉が涙声だった事には触れることはせず、パートナー達は気の済むまでレイラの抱き枕と化していた。
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CrazyBook(プロフ) - コメントありがとうございます!本当に気長にお待ちください。 (2019年8月12日 9時) (レス) id: 89127ffd6d (このIDを非表示/違反報告)
菜々美 - この作品好きです!ゆっくりでいいので更新頑張ってください。 (2019年7月18日 16時) (レス) id: 179628e6fd (このIDを非表示/違反報告)
CrazyBook(プロフ) - かしわさん» コメントありがとうございます!完結するまで更新し続けますので気長にお付き合いください! (2019年3月24日 21時) (レス) id: 8c59f4ad06 (このIDを非表示/違反報告)
かしわ - この作品好きです。更新頑張って下さい。 (2019年3月23日 1時) (レス) id: 356d08c55f (このIDを非表示/違反報告)
CrazyBook(プロフ) - ルインさん» コメント、ありがとうございます!嬉しい限りです!これからも気長に読んでください! (2018年7月19日 19時) (レス) id: 31b46a970e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:CrazyBook | 作成日時:2018年3月28日 22時