取り消せない ページ50
デオルトside
なんだ……
なんだこの女は……！？
俺が的確に指示を出すが、グラエナの攻撃はアゲハントをかすりもしない。
そのアゲハントは攻撃をかわすだけで、攻撃を仕掛けてはこない。
何を考えているのか分からない顔で、女は俺を見ている。
その紅い瞳は薄暗いここでも、霞むことなく光を放つ。
いや、炎を宿しているのか……？
【復讐】と言う名の……
いや、あれは俺へのモノではない。
俺よりもっと遠く、高い誰かに剥いたもの……
ゾワリ、と背筋に寒気が走る。
紅い炎は俺に囁き続ける。
ーお前は邪魔だ、
私の道にお前は不要だ、
そこを退け、
そこを退け、
さもないと……
悲鳴でもあげられた方が楽だと思う。
もはや指示すら出せなくなった俺へ、女は小さく首をかしげる。
「……終わり、か……口だけは……立派だったね……」
俺はとんでもない地雷を踏んでしまったのだろうか。
何か指示を受けたアゲハントの姿に、今まで切り捨てた奴らの姿が重なる。
ーお前は所詮、ジムトレーナー止まりの人間だよ。
実際に聞こえたかは分からない。
目の前を“銀色の風”で吹き飛ばされたグラエナが横切る。
こんな目に遭うのは全部あの女のせいだ……
あの女さえ現れなければ……
嫌に静かになった世界に、自分の声だけがよく響いた気がした。
……
「……消せ」
口をついて出た言葉は取り消せない。
何も言えない俺の視界の隅で黒い影が地を蹴る。
アゲハントを素通りし、
躊躇いなく女へ牙を剥く獣は、間違いなく俺のパートナー。
ー取り返しのつかない事をした
そんな事が脳裏をよぎったのもつかの間、
グラエナは容赦なく“風起こし”で宙へ巻き上げられる。
そしてそのまま、アゲハントのストロー状の口が突き刺さった。
体力を吸い付くされたパートナーはドサリと地面に落ちる。
と同時に俺の足も仕事を放棄した。
その場に座り込み、ようやく女を見上げる。
俺やグラエナに目もくれることなく、パートナーを戻した女はツカツカと階段を上っていく。
と、
「なぁ、理解してる……？」
女が口を開く。
振り返ることもできない俺へ、女の言葉が突き刺さった。
「自分を追い込むのは……
自分だけなんだよ……
特に……
自分が見えてない奴らはね……」
………
コイツ、心でも読めんのかよ……
思わずそう呟きそうになった自分に、理性が戻ったのを安心した俺は、
パートナーと同様に意識を手放した。
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CrazyBook - ミアンさん» コメント、ありがとうございます。とても嬉しいです！現在3作品を掛け持ちしているので、どれかが完結した後に書き始めようと思っています！……本当に気長にお待ちください……！ (2018年3月24日 23時) (
レス) id: 31b46a970e (このIDを非表示/違反報告)
ミアン(プロフ) - 怪盗クイーンのお話も読んでみたいです…！ (2018年3月23日 18時) (レス) id: e3b3d0f2e7 (このIDを非表示/違反報告)
CrazyBook - 沖司美夜さん» コメントありがとうございます！勿論、一度でもコメントをくださった方のお名前は覚えてます！更新頻度がガタ落ちしましたが、気長にお付き合いください……！ (2018年2月15日 19時) (レス) id: 31b46a970e (このIDを非表示/違反報告)
沖司美夜(プロフ) - お久しぶりです。覚えていらっしゃるといいのですが………。更新大変だと思いますが、頑張ってくださいね！ (2018年2月15日 18時) (レス) id: bf4ebf6ea6 (このIDを非表示/違反報告)
CrazyBook - ボムねこ@月夜の女神シィさん» ご指摘ありがとうございます。すぐに書き直させていただきます！ (2017年10月10日 20時) (レス) id: 31b46a970e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：CrazyBook | 作成日時：2017年8月16日 19時
