五話 ページ6
「何だかお腹すいちゃった」
「銀時君、冷蔵庫開けていい?」
「お前らくつろぎすぎじゃね!?」
Aの不意に呟いた一言に、桂が真顔で悪ノリする。
そのあまりのアットホームな雰囲気に、銀時は思わず抗議した。
ちなみに冷蔵庫にはまともに食糧が入っていない。
そんなことは露知らず、二人は冷蔵庫に向かって子供のように駆けていく。
「Aー!わしと一緒に来れば美味いものも変なものも食い放題じゃぞーー!!」
「変なものはちょっといらなーい!」
坂本が呼びかければ、至極当然の返事が返ってくる。
二人が冷蔵庫を開ければ、銀時の記憶通り中身はほとんど空。
冷蔵庫の中身にダメ出しをするAと桂の背中を眺めながら、坂本は急に声のトーンを落とした。
「………Aは元気そうじゃの」
「あァ」
銀時も低く返事をしながら、Aの方を見やる。
背中越しに見える横顔は楽しげだった。
その笑顔を再び見ることが出来たのは、奇跡に他ならない。
「―――銀時」
坂本は改まった口調で、小さく口を開いた。
銀時の視線がわずかに動く。
「お前と最後に話したあの夜のこと、覚えちょるがか?」
「…………さてな」
そう言いながらも、銀時の中では坂本が戦から離れると告げた夜のことが甦っていた。
途中から寝たような気がしないでもないが、確かに覚えている。
Aが消えて間もなく戦線を離脱した坂本。
結末の分かり切った戦いに見切りをつけ、大局を見据えようとした結果だった。
「今だからこそ言えるが…………わしゃーホントはAのことも連れてくつもりじゃった。Aが傷つくのをこれ以上見たくなかったし、何よりわし自身が、Aに傍にいて欲しかったんじゃ」
「………………」
「皮肉なもんじゃった。宇宙に行くのはずっと前から考えちょったに、決め手がAの死になったのは。……それだけが、ずっと心残りじゃった」
あの夜。
坂本はAの名前を一言も出さなかった。
彼女が消えたことに責任を感じていた自分を気遣ったであろうことは、銀時も気づいていた。
本当に、彼女が今こうして生きているから言えた話なのだろう。
「ようやく憑き物が取れた。生きていてくれて良かったと思う」
サングラス越しの真っ直ぐな瞳が、銀時を見据える。
ああ、そうか。
銀時は自然と腑に落ちるのを感じた。
こいつも、本気で。
出かかった結論は、その直後のAの言葉で一瞬にして掻き消された。
「ところで、晋助は?」
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梓 - ほんとにほんとに面白いです!!!更新頑張ってください!待ってます!(返信不要です汗 私が勝手に想いを伝えたかっただけなので…) (2020年7月1日 21時) (レス) id: b54ff5a336 (このIDを非表示/違反報告)
Lea - ほわいとさん» わ、わ、はじめまして!めちゃくちゃ更新に間が空いてすみません!当時見ていてくださったんですね、ちょっと恥ずかしいですが嬉しいです!ありがとうございます!リメイク版はまた展開をちょこちょこ変えるつもりなので、その違いも楽しんでいただけたらと思います! (2020年6月30日 20時) (レス) id: 1623825e3c (このIDを非表示/違反報告)
ほわいと - はじめまして、当時この小説にハマっており数年後の今リメイク版を出されるとは思わず感動していますメッチャクチャ嬉しいです!!これからも応援しております (2020年6月20日 17時) (レス) id: 02cfa52dfe (このIDを非表示/違反報告)
Lea - 一寸先はダークさん» ありがとうございます!その辺りめっちゃ頑張って書いたので嬉しいです!!ザキの事情は当時かなり衝撃を受けました笑これから数話を高杉に割くので、彼のことも見てやってください〜 (2020年6月8日 11時) (レス) id: 1623825e3c (このIDを非表示/違反報告)
一寸先はダーク - Leaさん!とても面白いですね!!ザキが可愛かったです。元ヤンには見えないなぁw。銀さん達との再会とかも描写がとても綺麗で想像しやすかったです!更新無理せず頑張って下さい!応援してます! (2020年6月7日 13時) (レス) id: 771b180e53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Lea | 作成日時:2020年6月3日 12時