二十四話 ページ25
***
「上条さんは、あの中の誰かと付き合ってるんですか?」
戦争の合間のちょっとした日常。
剣術よりよっぽど達者に機械をいじりながら、鬼兵隊の平賀三郎はにかりと笑った。
彼の視線の先を追ってみれば、そこでは後に伝説となる攘夷志士達が口論している。
元々喧嘩を始めたのは銀時と高杉だったが、桂と坂本が仲裁に入ろうとして火の粉を浴び、自らも喧嘩に加わるという有様だった。
幸い周囲にはAと三郎以外に誰もおらず、被害の心配はない。
そうでなければ、「止めて下さい」と仲間がAに泣きつくところだ。
「ううん、全然」
息をするように否定するAに、三郎は「ええ?」と戸惑いを見せた。
「そういう話も一切?」
「ないよ」
彼らの好意は周囲から見てもバレバレだというのに、本人は全く気が付いていないらしい。
その場のノリでアピールすることはあっても、根本的な所ではAに気づかれないように牽制し合っているせいもあるだろうが、三郎は彼らを少し気の毒に思った。
いっそ彼女に告白するような男が出てくれば事情も変わるだろうが、攘夷志士の巨頭である彼らの紅一点に突撃するような勇者はさすがにいないだろう。
天人の軍勢に放り込まれる方がよっぽどマシだ。
「えっと、じゃあ……」
このまま終わっても面白くないと、三郎は次の質問を考えた。
「仮に、仮にですよ。あの中の誰かと付き合うなら誰にします?」
わくわくと期待する気持ちを抑えながら問いかける。
もちろん「誰でもいい」は却下するつもりだ。
どれだけ悩むだろうかと思いきや、返事は意外にもあっさり返ってきた。
「辰馬かな」
「……どうして?」
少しがっかりしてしまった辺り、自分はどうやら幼馴染だという三人の中の誰かであることを期待していたらしい(だってその方がドラマチックだ!)。
三郎の不満げな様子にAは首を傾げながら、「だって」と答えた。
「家族、って言い切るのは何か違うけど、私は彼らのことそんな感じに思ってるから」
彼らにとって残酷な答えに、三郎は頭をガツンと殴られたような気分になった。
「家族」というのは確かに正確ではないのかも知れない。
しかし「男性」である以前に、彼らは「彼ら」としてAの心に住み着いてしまったのだろう。
親兄弟に恋愛感情を抱かないように、Aは彼らを異性としては見ていないのだ。
三郎はそれ以上何も言えなくなった。
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梓 - ほんとにほんとに面白いです!!!更新頑張ってください!待ってます!(返信不要です汗 私が勝手に想いを伝えたかっただけなので…) (2020年7月1日 21時) (レス) id: b54ff5a336 (このIDを非表示/違反報告)
Lea - ほわいとさん» わ、わ、はじめまして!めちゃくちゃ更新に間が空いてすみません!当時見ていてくださったんですね、ちょっと恥ずかしいですが嬉しいです!ありがとうございます!リメイク版はまた展開をちょこちょこ変えるつもりなので、その違いも楽しんでいただけたらと思います! (2020年6月30日 20時) (レス) id: 1623825e3c (このIDを非表示/違反報告)
ほわいと - はじめまして、当時この小説にハマっており数年後の今リメイク版を出されるとは思わず感動していますメッチャクチャ嬉しいです!!これからも応援しております (2020年6月20日 17時) (レス) id: 02cfa52dfe (このIDを非表示/違反報告)
Lea - 一寸先はダークさん» ありがとうございます!その辺りめっちゃ頑張って書いたので嬉しいです!!ザキの事情は当時かなり衝撃を受けました笑これから数話を高杉に割くので、彼のことも見てやってください〜 (2020年6月8日 11時) (レス) id: 1623825e3c (このIDを非表示/違反報告)
一寸先はダーク - Leaさん!とても面白いですね!!ザキが可愛かったです。元ヤンには見えないなぁw。銀さん達との再会とかも描写がとても綺麗で想像しやすかったです!更新無理せず頑張って下さい!応援してます! (2020年6月7日 13時) (レス) id: 771b180e53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Lea | 作成日時:2020年6月3日 12時