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二十八話 ページ30

「わ」

「うげ」

その男の顔を見るなり、新八と神楽は同時に後ずさった。

「え、知り合い?」

驚いてAが尋ねれば、神楽は「誰がこんな奴」と眉を顰める。

確かに知り合いに会ったというには、彼女達の表情は苦々しい。

しかし、それは男――土方も同じで、頭が痛いと言わんばかりに険しい表情を浮かべている。

「どうしてお前らがここにいる」

神楽はふんと鼻をならすと、土方の眉間に向かって真っ直ぐに指さした。

「オメーがいたいけな少女をパシるから助けてやっただけアル」

「“いたいけ”な“少女”だァ?」

土方は横目でAを一瞥すると、馬鹿にしたように鼻で笑う。

これにはさすがのAも顔を曇らせた。

(そりゃもう少女って歳でもないけどさ)

だからといってそこまで馬鹿にされる言われはない。

嫌いにしたって、そこまで邪険する必要はないのではないか。

「お前、最低アルな」

「黙れ。用があっても無くてもさっさと帰れ」

「………………」

口論する神楽と土方にAはずんずんと歩み寄る。

視界の隅で戸惑った様子の新八が見えた。

「土方さん」

「あ?邪魔すん………どわあッ!!!???」

言い終わる前に、Aは土方の右手を引っ掴み、マヨネーズの入った袋を強引に引っかけた。

突然の重みにバランスを崩し、土方がよろめく。

「これ!頼まれていた品です!!それから神楽ちゃん達は私を助けてくれただけですから!!」

Aは言葉の端々を強調しながらそう言い放つと、新八と神楽を振り返った。

「ね?」

「え、ええ……まあ………」

「礼なら酢昆布でいいアル。あと定春のエサ」

「うん、分かった」

Aは穏やかに笑ったが、新八は内心冷や汗をかいていた。

しかしこればっかりは土方が悪い。

「あの言い方はさすがに良くないですよ。姉上なら手が出ます、手が」

「………チッ………」

新八が軽く耳打ちすると、さすがに悪いと思ったのか、土方は気まずそうに舌打ちをする。

新八は、土方が女性に対してここまで態度が悪いのも珍しいと感じた。

(………やっぱり、何か事情があるのかな)

Aの様子をこっそりと窺う。

彼らの上司である坂田銀時が忘れられない女と同じ名前を持つ女性。

何を聞いても銀時の口から語られない辺りに、訳アリなことだけは感じていた。

先程した質問の回答は聞きそびれてしまったが、もしかしたら――。

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作者名:Lea | 作成日時:2020年5月21日 17時

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