検索窓
今日:20 hit、昨日:4 hit、合計:102,812 hit

二十六話 ページ28

少し目を離した隙に、山崎の目の前から消えたA。

その理由は簡単である。

「わっ、わああああああ!?」

Aは現在、高速で商店街を走り抜けていた。

正確には、彼女が今乗っている人の何倍も大きな白い犬が、である。

人々はその勢いに驚きながら、慌てたように道を開けていく。

人を轢きはしないかと、思わず身を乗り出せば、前に座る少年が忠告するように言った。

「ちゃんと掴まってて下さいね!」

「おい新八、あんま私に触んなヨ」

「そういうこと言うなァァァァ!!!」

少年の言葉に反応したのは、Aではなく先頭に座る少女。

少女はAの代わりに、マヨネーズの袋を抱えてくれていた。

そもそもこうなったきっかけは、ふらふらと頼りなげに歩くAに少年が声をかけてくれたことにある。

あまりにも重そうな荷物を抱えるAを心配したらしかった。

遠慮するAを少女が問答無用で犬の上に放り投げ、そのまま駆け出して今に至る。

「あ、そこを右」

「定春、右アル」

「ワンッ」

最初こそそのスピードに気圧されたが、慣れてくと意外に楽しい。

Aは落ちないようにと少年の服を握りしめながら、少女の後ろ姿に問いかけた。

「えっと、定春君と新八君と、あなたは?」

「神楽アル」

「神楽ちゃんね。助けてくれてありがとう」

見えていないとは思いながらも、二人と一匹に向かって微笑みかければ、新八が軽くAの方に振り返った。

肩越しに見える顔は、まだ幼さが残っている。

「気にしないでください。何たって僕達、万事屋ですから」

「万事屋?」

「そうアル!万年金欠の何でも屋ネ!!」

「神楽ちゃん!!!余計な事言わないで!」

「あははっ!そうなんだ」

元気よく言い放った神楽の言葉を、新八が慌てて止める。

しかし、ばっちり聞いてしまったAは、そのやり取りに声をあげて笑った。

頬を過ぎる風が気持ちいい。

「本当に恥ずかしい限りで……」

耳を赤く染めて、新八は誤魔化すように笑う。

反対に神楽は気にした様子もなく、大胆に身を乗り出してAの顔を不躾に覗き込んだ。

「それにしても見ない顔アル。本当にこの辺の人間アルか?」

「ううん。実は最近江戸に来たばかりで」

「そうなんですか?あ、そういえば名前は……」

新八の言葉に、まだ自分が名乗っていなかったことを思い出す。

「私はA。上条A」

「!!!」

Aは、自分の言葉に新八の背が強張るのを感じた。

二十七話→←二十五話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (60 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
112人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 逆ハー , 微原作沿い
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Lea | 作成日時:2020年5月21日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。