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十七話 ページ19

嵐のような一日が終わり、夜が更けた。

寝静まり、静かになった屯所の中で、わずかに光が残る部屋は数えるほどしかない。

その中の一つにAの部屋があった。

(明日はまず掃除かな)

屯所の間取り図を眺めながら、Aはそう結論付ける。

午前はAの出仕に猛反対していた土方だったが、どうしたことか、午後になった途端に態度を翻した。

Aの部屋にやって来たと思ったら、急に「今日中に頭に叩き込め」と言って間取り図を寄越したのだ。

とは言え納得した、という様子ではなく、その表情はまさに苦虫を噛み潰したようだった。

押し負けて、もしくは諦めて、渋々了承したといったところだろうか。

(土方さん………かぁ………)

たった一日で、彼との関係はころころと変わった気がする。

最初が一番穏やかだった。

助けた方と、助けられた方。

気遣うような言葉は無かったが、口調に棘も無く、彼なりに気にかけてくれているようだった。

それが一変したのは事情を説明してから。

あの瞬間、彼のAを見る目は恐ろしく懐疑的になった。

(そりゃ疑うよね………)

むしろ、素性も知れない自分にあそこまで親身になってくれる近藤の器に驚くばかりだ。

だからこそ余計に、土方は部外者に対して神経質になるのかもしれなかった。

かと思えば、午後からの急変。

今はAを見定めていると表現するのが正しいだろう。

『余計な行動は慎めよ』

部屋を出ていく間際の土方の言葉が頭をよぎる。

Aは所々情報の抜けた間取り図を一瞥し、これからどうしようかと思い悩んだ。

沖田に乗せられて思わず働くと言った手前、今更引き下げるわけにもいかない。

こうして助けてくれた近藤への恩に報いたいというのも本音だった。

(考えてもしかたない、か)

Aは改めて、明日の掃除について考える。

日中、間取り図を見ながら屯所を周っていた際、廊下のゴミや汚れがやたらと目についた。

男所帯ということもあって、綺麗にしようとは中々ならないのだろう。

Aは頬に手を当てて、軽く首をひねった。

「山崎さん。掃除用具ってどこにありましたっけ?」

「ああ、それならこの部屋を出て右に曲がった二つ先の部屋にありますよ」

「なるほど、ありがとうございます」

「いえ、どういたしまして」

Aの問いに、天井から返事がする。

間取り図を畳んで引き出しに仕舞おうとしたところで、気づいたように「ああっ!?」と声が響いた。

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作者名:Lea | 作成日時:2020年5月21日 17時

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