検索窓
今日:26 hit、昨日:4 hit、合計:102,818 hit

十一話 ページ13

「し………真選組………?」

Aは全身の血の気が引いていくのを感じる。

江戸に至るまでの道中、名前だけは幾度ともなく聞いてきた。

見廻組と合わせて二大武装警察の一つで、その主な任務は攘夷浪士の取り締まり。

つまり………。

Aは首を振って、よぎった思考を振り払うと、軽く深呼吸をした。

早くなっていた鼓動が、落ち着いてくる。

「あの」

Aが声をかけると、口論をしていた二人はようやくAの存在を思い出したようだった。

土方、と呼ばれた方が口に咥えた煙草を手に取って振り返る。

「………あァ、悪ィな………って」

「?」

急に言葉を詰まらせた土方。

首を傾げるAから土方は視線をそらし、煙草を指先で弄びながら何故かもう一度「悪い」と呟いた。

彼には謝られてばかりな気がする。

「なんつーか……随分と見違えたな」

そう言われて、Aは先程の醜態を思い出す。

普段の寝起きはむしろ良い方だが、今回ばかりは悪夢を見た直後ということでタイミングが悪すぎた。

(は……恥ずかしい!!)

思わず赤面するAの顔を、童顔の男が興味深そうにしげしげと覗き込んだ。

「あーらら、ナニしたんだよ。切腹しろ、土方ァ」

「ナニもクソもしてねェよ!お前はさっさとどっか行け、総悟ォ!!!」

童顔の男…沖田総悟は、良いからかいのネタを見つけた、とばかりに、ニヤニヤとした笑みを浮かべる。

土方はまた刀をブンブンと振り回したが、沖田は意にも介さない。

「おい、メス豚」

「上条Aです!」

「アンタ土方の何?愛人?」

「だァァァかァァァらァァァァァァ!!!」

沖田の質問に土方が割り込む。

いい加減に血管が切れてしまいそうだ。

沖田はそんな土方の様子も面白いと言わんばかりに、口元を歪めた。

「だって、コイツを連れ帰ってきたのは土方さんじゃないですか」

「近藤さんだっていただろ!!!」

「!」

Aは、はじかれたように土方に視線を向けた。

土方もその視線に気づき、煙草を咥え直しながらAを見据える。

「………まァ、そういうことだ。お前が俺にぶつかって、こうして連れ帰ってきた」

「あの」

「ついて来い」

有無を言わさず歩き出した土方。

Aは沖田と顔を見合わせると、小走りで土方の後を追う。

残された沖田も、ふむ、と顎に手を当てて暫くその後ろ姿を眺めていたが、やがて後を追ってゆっくりと歩き出した。

十二話→←十話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (60 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
112人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 逆ハー , 微原作沿い
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Lea | 作成日時:2020年5月21日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。