【銀魂】光翼鳥の剣：re1 (ページ11)

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九話ページ11

「………」

真っ暗な闇の中で、誰かが自分を呼ぶ声する。

「………！」

「………………！！」

辺りを見回しても何も見えず、声の主がどこにいるかもわからない。

諦めて目を閉じれば、瞬間、鮮やかにその光景が広がった。

辺りを覆う土煙、厚い黒雲、隠された白い月。

流れる鮮血。

見開かれた目。

ひきつった表情。

柔らかい触り心地が大好きだったーー銀色の髪。

「Aァァァァァァァァァァァァ！！！！！」

＊＊＊

「………………！！」

眩しい光が障子を通して部屋に降り注ぐ。

誰かに応え、誰かを呼び、誰かに向かって伸ばしたはずのAの手は、行く当てもなく宙を彷徨っていた。

寝ていたはずなのに、息が上がっている。

汗が一筋彼女の首を伝った。

Aは重い上体を気だるげに起こすと、ゆっくりと周囲を見回した。

知らない部屋だ。

手入れされてはいるが、普段はあまり使われていない部屋らしい。

Aが今寝ている布団以外にあるものと言えば、箪笥と小さな机だけだった。

「そうだ、昨日………」

落ち着いてくると、昨日の記憶が甦ってくる。

恐怖のままにひたすら走り、男と衝突し、そのまま気絶。

思い返せば情けないことこの上無かったが、後悔しても今更どうしようもない。

「あの人達が助けてくれたのかな………」

Aは枕元に置かれた自分の荷物を眺めながら呟いた。

混濁した意識の中で、わずかに捉えた黒い服。

自分を心配する男の声が、妙に耳に残っていた。

今こうして無事でいるということは、彼らが見ず知らずの自分を保護してくれたに違いない。

「お礼を言わなきゃ」

今何時かは分からないが、家主はまだいるだろうか。

簡単に身支度を整えようと、鏡を取り出そうとしたその時だった。

「目が覚めたのか？」

「！！」

すらりと障子が開いたと思えば、真っ黒な衣装を身にまとった男がAの目の前に佇んでいた。

男の髪は衣装に劣らず黒く、若干瞳孔が開いているようにも見える瞳の眼光は鋭い。

それは冷たく威圧的でもあったが、その整った目鼻立ちは、Aの目を引き付けるには十分だった。

囚われたように男を見つめるA。

男はその視線に少し居心地悪そうに身じろぎした後、「あー…」と意味もない声を上げた。

「………悪ィ」

男はそれ以上何も言わずに、襖を閉じてさっさと立ち去る。

その音に我に返ったAが慌てて鏡を手にすると、酷い顔をした寝起きの自分がこちらを覗いているのだった。