【アルスマグナ】光のさきには…【九瓏ケント】

8話 ページ8

「いつからアルスのメンバーに媚び売ってたの？」

「凄いなー。地味子ちゃんはしたたかで。」

「どうやるの？私達にも教えてよー。」

トイレの床に蹴り倒され、何本もの足が私を手加減なしに踏みつける。

ここが綺麗なトイレでまだよかった。とどこか現実逃避しながら、早くこの瞬間が終わるようにただ耐える。

だから言ったのに…

あの人達が勝手な事をするから。

「あれ？地味子ちゃんはお口がないのかなー？」

「なんか返事してよー。」

「私達寂しいなー。」

容赦のない踏みつけが、だんだんと蹴りへと移行する。

『うぐっ…ぅ…』

まるでサッカーボールを蹴るかのように助走をつけ、私の体めがけて足を振り切る。

そんなことしたら自分達だって痛いだろうに…

「チクらなければ、今までみたいに優しく接してあげたのに。」

「悪い子にはお仕置きが必要だからね？」

床へ横たえていた頭が持ち上がったかと思うと、ギュッと頭皮が引っ張られる感覚。

彼女たちの1人が、私の短い髪を鷲掴んでしる。

『いっ…いたぁ…』

「ん？何々？喉が渇いた？」

「しょーがないなー。お水あげるよ。」

ニヤニヤとした笑顔でトイレ掃除用のバケツに水を溜める。

私は髪の毛を掴まれ、さんざん蹴り飛ばされた体はじんじんと痛くて動くこともままならなかった。

バケツに水が溜まるとそれを持って近づいてくる。

「ちょっと、あたしにまで水かけないでよ？」

「分かってるって。でもかかったらゴメン。」

「おいっ！マジかよー！」

「冗談だってー！」

「でもみんな足も元濡れるくらい覚悟しないとね。」

「あー確かに。まっこの後帰るだけだし、いいでしょ。」

「ほら、もっと顔上げてー。」

どうして人をいじめている時、こうもいい顔をするのだろう。

心底悪そうな、罪悪感も振り切れたいい笑顔。

苦痛に歪む私の表情も今の彼女達には笑顔になる材料なのだ。

髪の毛を引っ張られ、上を向かされた私。

頭の上には既にバケツが準備されていた。

流石にこの水を飲むのはお腹壊しそうだな。と考え出来る限り息を吸い込む。

バシャバシャ…

「きゃー！つめた！」

「ちょっとー！袖濡れたー！」

私の髪を掴んでいた子の袖が濡れたらしく、頭から手が離れ私の顔は床へと叩きつけられた。

『ゴホッゴホッ…』

ゴンという鈍い音とともに、鼻に入った水のせいで咳き込む。

「えっ…ちょ…やばくない？」

「うわっ…やばっ。いこ」

慌てたように全員が出て行った。

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