【アルスマグナ】光のさきには…【九瓏ケント】

26話 ページ26

黄「Aちゃんの担当は女の人にしてもらったから安心して！」

『お気遣いありがとうございます。』

タツキがそういうと、1人の女性が前に出てくる。

「いらっしゃいませ！榊原様からお話は聞いております！」

黄「上霧さん！Aちゃんよろしくね！」

カミキリと呼ばれたその人は、元気のいい笑顔で頷いた。

上「それではA様、こちらへどうぞ。」

『はっはい！』

Aが案内されるのを見届けたタツキと朴は、待合室に腰を落ち着けた。

一方Aは通された個室の椅子へと座る。

上「本日担当させていただきます、上霧です！」

『よっ…よろしくお願いします…』

初めての体験に緊張気味のA。

そんなAは見て、上霧はくすっと笑った。

上「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。」

『すいません…』

上「リラックス、リラックス。」

カットクロスをかけ終わると、ポンポンと肩を叩かれる。

上「Aさん…これはどこで？」

乱雑に切られた後ろ髪を触る上霧。

『自分で切りました…』

上「あらあら、どおりで…」

『どうにかなりますか…？』

上「もちろんですよ！プロに任せて下さい！」

グッと力こぶを作った上霧は、カウンセリングを進めていった。

シャンプーを終えて、再び椅子に戻ると直にカットが始められる。

上「イメージは事前に聞いてるんだけど、何か希望はある？」

『えっと…できれば前髪はこのままがいいです…』

上「それはダメ！」

シャンプー後はいやおうなしに顔がさらけ出される。

上「せっかく綺麗なお顔なんだから、出していかないともったいないよ！」

『いや…そんな事は…』

上「ダメダメ―。その希望には添えません！」

『そっそんなぁ…』

Aの小さな反抗の言葉も虚しく、長い前髪は目の上の長さで切りそろえられた。

進んでいくカットをジッと見つめるA。

『上霧さんって…』

上「ん？何？」

『美容師さんになるために生まれてきたって感じですね。』

上「よく言われるー。たまに冗談ですか？って言ってくるお客さんもいるくらい。」

クスクスと笑いながらも手元はせわしなく動く。

上「でも私、美容師って職業気に入ってるの。」

上霧の手が止まると、鏡の中に映るのは180度印象の変わったAの姿。

上「こうしてお客さんを驚かせられるからね！」

後ろにいた彼女はぱちんとウインクをした。

『あっ…ありがとうございます。』

上「さっ、待ち人をびっくりさせよう！」

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