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3話 ページ3

1日の検査入院を終えて、寮へ戻る日。

これから警察で事情聴取があるらしい。

手続きはケントがしていたため、Aは自身の荷物を持って礼を言い病院を出た。

病院を出るとタイミングよく目の前に車が止まった。

運転席のドアが開くと降りてきたのは…

『九瓏先生…』

紫「乗りな?事情聴取付き合うから。」

『でも…』

紫「遠慮すんな。先生も一応関係者で呼ばれてるから。」

小さく頷けば、Aから荷物を受け取り助手席を開くケント。

『ありがとうございます。』

紫「いいっていいって。気にすんな。」

後部座席へ荷物を積み込むと、運転席へ戻ってくる。

シートベルトを締めると車は走り出した。

紫「A。その、色々聞きたいんだけど…」

『色々…ですか?』

片手でハンドルを握るケントをチラッと盗み見るA。

その顔は少し複雑そうだった。

紫「どこまで聞いていいのか分かんないけど、そのーご両親の事とか、今回の事とか。」

なんと答えたらいいのか分からず、Aは視線を膝の上で握りしめた手に移す。

紫「ごめんな?話すの嫌なら、無理矢理聞いたりはしないから。」

『ハイ…』

しばらく沈黙が続き、エンジン音だけが響いた。

紫「けど、もし話せるなら、話してほしい。そうすることで楽になる事もあるから。」

『楽にですか…?』

紫「うん。今のAは凄く辛そうだから。先生で良ければ力になるよ。」

『私が、辛そう?』

紫「そう見えるけど、違うか?」

ケントのその問いにAはしばらく考えているようだった。

『分かりません。もう、何が辛くて、何が辛くないのか。』

Aのその言葉にケントは驚いて隣の彼女を見る。

紫「どういう…」

『先生、前進んでます。』

冷静に言われ、ケントは言葉を飲み込んで再度前を見つめた。

それからもずっと、彼女の言葉が頭をめぐっていた。

先に事情聴取を終えたケントは長椅子に腰かけAを待つ。

-何が辛くて、何が辛くないのか‐

彼女はそれが分からないと言った。

それがどんな意味を持つのか、考えるのは悪い事ばかりで…

彼女の今現在の姿や、保護者欄の苗字の違う名前を見れば、それはあながち間違いではないのだろうという確信があった。


普段は長い前髪で隠れたAの顔。

まるで風紀委員かのようにきっちりと着こなされた制服、他の女子生徒より長いスカート。

いつも俯いて、あまり声を発する事もない。

まるで自分の存在を必死に薄くしているように見えた。

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炭酸(プロフ) - 剣城萌江さん» ありがとうございます(^^)こんな駄作ですが…先生をより好きになるお手伝いが出来て私は幸せです! (2017年7月8日 10時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)
剣城萌江(プロフ) - 最近リア友にアルスマグナを布教され、見事に沼にハマった新米メイトです。ケント先生推しなので最初からドキドキワクワクしました!これを読んでもっと先生のことが好きになりました(*´ω`*) (2017年7月6日 16時) (レス) id: 869f1bba53 (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - あさべるさん» ただいまです!ありがとうございます(^^)読みに来てください!ゆっくりではありますが、書き始めてますので、気長にお待ち下さい(^_^;) (2017年6月4日 23時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - アメさん» ご無沙汰してます。長らくお待たせしました(;´Д`)お気遣いありがとうございます(^^)アメさんもお気を付けて! (2017年6月4日 23時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - 韮さん» ただいまです!はい!のんびり楽しく頑張ります(^^) (2017年6月4日 23時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:炭酸 | 作成日時:2017年2月22日 0時

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