Story.40 ページ41
「ヒュースを玉狛第2に入れる?新手の冗談?」
私が本部のモニタールームから出て太刀川隊の隊室に来るまでの道中で、迅が私を待ち伏せしていたのだ。
そうして私に話した内容は、ヒュースを玉狛に入れる、という話であった。
「冗談じゃないよ。ヒュースと賭けをしてたんだ、負けた方が勝った方の言うことをなんでも聞くってね」
「アンタね……ヒュースの言うこと聞くためにわざと負けたでしょ。勝つか負けるか視えるはずだもんね」
「まあまあ、勝負は勝負だ。そこでヒュースがどんな手を使ってもアフトクラトルに届けろとご所望なんだ」
「ふーん、ま、頑張りなさいよ迅。私は知らない」
「そこでおまえにお願いしにきたんだ」
そんな迅の言葉を聞いて、思わずカッと目を見開く。
迅から言われたくない言葉ランキング1位は“お願い”だ。
「い・や・よ!!!!アンタのお願い毎回ろくでもないもの!今回のガロプラ戦でもヒュースを護れって言ったり……このために私がヒュースに情が湧くの狙ってたのね!?」
「……そうでもしなけりゃ現実的に考えてアフトクラトルの捕虜をボーダーに入隊させるのは難しいだろ。城戸さんが居る」
「はぁ……確かにアフトクラトルの遠征でも私が遠征艇の指揮になるのは決まってるようなものだものね。
遠征後の責任が私の肩にかかることを知ってるから城戸さんも私がお願いすれば無下にはできないわ」
「……おれはアイツを国に帰してやりたいんだよ」
ぽつりとそう言った迅の顔を見ると、少し力無く微笑んでいた。迅の目にはヒュースのどんな未来が映っているのだろうか。
そんなこと、知る術も知るつもりもないけれど。
「はぁ……悪いけど、城戸さんへの私からの直接のお願いは、しないわ。
……玉狛第2の子達も遠征に行きたいって言ってたわよね?
ただ、正直、今のあのチームを私の指揮下の遠征艇には乗せたくないわ。弱すぎる。
そこにヒュースが加わって遠征への芽が出る可能性があるなら、お願いは私からじゃなくてオサムからするべきでしょ?それに迅が気づいてないわけないわよね?」
「……まあ、そうだな」
「となると、私は交渉の場には行かないわ。
けど、後ろ盾は付ける。
私が譲歩できるのは、私が監視役兼師匠として、ボーダー内部にいる間のアイツの責任を肩代わりする。
それなら遠征中の責任の所在にも文句を言われにくくなる。
……これで満足?」
「ありがとう櫻」
そんな訳でヒュースが私の弟子になったのである。
1139人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
近藤。(プロフ) - 甲賀忍者さん» コメントありがとうございます。根が優しいけどひねくれ者を書きたかったので伝わっているようで何よりです!ヒュースの面倒も迅から押し付けられる予定なので……。楽しみにしておいて下さい! (2022年7月1日 22時) (レス) @page23 id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
甲賀忍者(プロフ) - 失礼します。作品読ませていただきました。主ちゃんの指揮、指導、後輩達への厳しい中にある優しさに虜になりました。正に一騎当千 目上の人にもズバズバ言う所が好きです。彼女にヒュースが誰よりも懐くとSEが言っている…上層部も上級隊員も私も主大好きす! (2022年6月28日 4時) (レス) id: 75f75dc2eb (このIDを非表示/違反報告)
近藤。(プロフ) - 竜胆さん» コメントありがとうございます!難しい所ですね。でも迅も大人だったらさらっと流してると思うんですよね、暴言。結局、大人として戦ってる主も迅も大人になりきれてないのだと思います。お互い様ですね笑 そんな中、皆が支え合って助け合える世界であれと願っています (2022年3月28日 15時) (レス) id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
近藤。(プロフ) - ゆうさん» 返信遅くなりすみません、コメントありがとうございます!私生活が多忙でなかなか更新できませんが、できる限りでがんばりますね!! (2022年3月28日 15時) (レス) @page16 id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - しょうがないんじゃないかなと感じてしまいました。避難するわけではないですけど、迅も迅で夢主のことをもう少し考えてやれば良いのにと思ってしまいました。大人って難しいですね。長々とすみません。これからも頑張ってください。 (2022年3月27日 11時) (レス) id: b5d562abb3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:近藤。 | 作成日時:2021年7月12日 17時