Story.1 ページ2
私は出水に連絡しようとスマホを開く。
すると、ちょうどタイミングが悪く先に私のスマホに着信が入った。
……三門市総合病院からである。
妹が数年入院しているこの病院から電話がかかってくることは日常茶飯事である。
そういえばメガネくんもこの病院に入院しているらしいな。そんなことを考えながら私は電話を取った。
『もしもし』
『もしもし、櫻さんのお電話でお間違いないですか?』
『はい。妹がお世話になっております。……何かありましたか?』
電話越しに聞こえた声は、いつもの穏やかな看護師さんのものではなかった。
その代わり、切迫したような、焦っているかのような声。
『落ち着いて聞いてください。妹さんが、目を覚まされました』
悪い知らせを覚悟して、表情を強ばらせていると、冷たい声でそんな言葉が耳に入る。
『あ……』
……言葉が出なかった。すると、一瞬遅れてやってきた安堵と共に目から涙がこぼれ落ちて、玉狛支部のリビングでヘナヘナと床に座り込む。
『……っ!よかった……!
ご連絡、ありがとうございます。すぐに、向かいます』
『……危篤です』
『……え?』
『目を覚ましたと同時に、状態が急変しました。急いでください……それから、覚悟してください』
そんな言葉を聞いた瞬間、温まった心がスっと冷える感覚がして、遂にこの日が来てしまったかという風にも感じて。
その言葉は、何万回も脳の中でシミュレートして考えてきたことだった。
安堵の涙を服の袖で拭うと、財布とスマホを持って玉狛支部を飛び出そうとする。
そんな私の異常な様子に、玄関を出る直前、迅が私の腕を掴んで引き止めた。
「……何があった」
「迅……。
……妹が、危篤だって」
「病院までどうやって行くつもりだよ。……待ってろ、車出すから。おれも一緒に行くよ」
いいよ、1人で。
喉まで出かかった言葉を口に出すことができなくて、唇をキュッと噛み締める。
そんな私を見て、真顔の迅が私の頭をポンポンと撫でると車の鍵を取りに自室へ戻る。
そうして病室に辿り着いた時、妹のベットの周りには、担当医の先生と数人の看護師の方が集まっていた。
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近藤。(プロフ) - 甲賀忍者さん» コメントありがとうございます。根が優しいけどひねくれ者を書きたかったので伝わっているようで何よりです!ヒュースの面倒も迅から押し付けられる予定なので……。楽しみにしておいて下さい! (2022年7月1日 22時) (レス) @page23 id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
甲賀忍者(プロフ) - 失礼します。作品読ませていただきました。主ちゃんの指揮、指導、後輩達への厳しい中にある優しさに虜になりました。正に一騎当千 目上の人にもズバズバ言う所が好きです。彼女にヒュースが誰よりも懐くとSEが言っている…上層部も上級隊員も私も主大好きす! (2022年6月28日 4時) (レス) id: 75f75dc2eb (このIDを非表示/違反報告)
近藤。(プロフ) - 竜胆さん» コメントありがとうございます!難しい所ですね。でも迅も大人だったらさらっと流してると思うんですよね、暴言。結局、大人として戦ってる主も迅も大人になりきれてないのだと思います。お互い様ですね笑 そんな中、皆が支え合って助け合える世界であれと願っています (2022年3月28日 15時) (レス) id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
近藤。(プロフ) - ゆうさん» 返信遅くなりすみません、コメントありがとうございます!私生活が多忙でなかなか更新できませんが、できる限りでがんばりますね!! (2022年3月28日 15時) (レス) @page16 id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - しょうがないんじゃないかなと感じてしまいました。避難するわけではないですけど、迅も迅で夢主のことをもう少し考えてやれば良いのにと思ってしまいました。大人って難しいですね。長々とすみません。これからも頑張ってください。 (2022年3月27日 11時) (レス) id: b5d562abb3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:近藤。 | 作成日時:2021年7月12日 17時