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「____来たか」
初めに視界に映ったのは麗しい見た目の男だった。
ウェーブがかった黒髪の隙間から、真っ赤な瞳がのぞいている。
白い帽子を被り、スーツに身を包む彼を私は見たことがある。
ある日の夜、私の家族を食い殺した鬼を、倒した鬼。
自らを鬼の始祖と名乗り、私が成長した暁には迎えに行くと言って去った鬼。
「……(誰だっけ)」
「鬼舞辻無惨だ」
何こいつ読心術でも身につけてんの?
私が思った瞬間に答えた目の前の鬼に鳥肌が立つ。たまたまだと信じたい。
こんなところに私を閉じ込めて一体何の用だろう。見たところここの造りは和室、どこかの襖を開けて入口まで行けば脱出は可能だろうけれど。
なんかそんな簡単にここから出られない、気がする。
ぞわりと悪寒がした。
「やっと、この時が来たのだな
A、私はお前の事をこの世の誰よりも愛している。私と生涯、穏やかな暮らしをともに過ごしてはくれないか」
身を屈めて私と目を合わせてそう告げる目の前の鬼に目を見開いた。
こいつ、私の事を自分の妻として娶る気か。
鬼舞辻無惨は鬼殺隊の中でも重要危険人物として扱われている。
鬼の始祖であり、鬼を生み出す力を持った唯一の鬼。
凶暴な鬼と善良な鬼がいるこの世の中、わざと凶暴な鬼を生み出しているのではないかと疑われている。
以前、輝哉様が『つけられることなら見張りをつけておきたい』とボヤいていたのをふと思い出した。
私が今ここで、鬼舞辻無惨のこの手を取って結婚すれば、それは即ち『見張り』と同等なのではないか?
それに、
「(私も歳頃だしなぁ…)」
結婚しても悪くない歳ではある。
結婚して家庭を持って、旦那から愛されて子供を育て可愛がる。女だったら誰しも夢見ることだ。
しかし私は鬼殺隊員、体に傷だって無い訳では無いし、第一鬼殺隊は結婚することが難しい。
鬼殺隊同士で婚姻を結ぶケースもあるが、周りに私に想いを寄せているような人は見受けられない。
それに、鬼と人間が結婚することも珍しくない。見廻りしているとよく見かけることだってある。
___今この手を取らなかったら、もう自分に結婚の機会なんて回ってこない可能性だって高いのでは?
無惨に恋愛感情は抱いていないことには気が引けるが、結婚して損は無いだろうと踏んだ私は、無惨が差し出した手にそっと自分の手を重ねた。
「……不束者ですが、」
嬉しそうに無惨が笑った。
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Nami - 冨岡さんに嫉妬する他の鬼滅メンバー面白かったです♪冨岡さん好きだぁぁ♥ (2022年11月4日 11時) (レス) id: 7f8b02d024 (このIDを非表示/違反報告)
もろん - 最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です(言い過ぎてごめんなさい) (2021年6月11日 17時) (レス) id: 2c8540451a (このIDを非表示/違反報告)
マロ(プロフ) - ひかりさん» 夢主ちゃん…君少し贅沢過ぎては…羨ましい!!! あんな素敵な声で囁かれたら気絶しちゃいますよ!? あぁ……好き… (2020年4月4日 1時) (レス) id: d8cf0d1c15 (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - マロさん» 無惨と結婚したらあのいい声で囁かれていい顔を毎日拝めるんですよね……至高の幸せですよね………… (2020年4月4日 0時) (レス) id: a5a72bcd0d (このIDを非表示/違反報告)
マロ(プロフ) - 無惨と結婚!? やだ…切実にお願いしたいです……無惨の笑みとか絶対素敵じゃないですか… (2020年4月2日 23時) (レス) id: d8cf0d1c15 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひかり | 作成日時:2020年3月28日 10時