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べつに私が今から君に施しをしようって訳じゃないんだよ?と言って、ひらひら手を振る奥様を凝視する。
「…奥様も教祖様だったの?」
「いや、教祖様ではないな。
話すと長くなるから言わないけど、あの頃の私はざっくり言うと『神の代用人』みたいなもので。色んな人の話を聞いては教えを説いてた時期があるんだよ」
ぼんやりと遠くのどこか一点を見つめながら話す奥様は、いつもの奥様ではない。
なんだか人として何かが欠落しているような、そんな雰囲気。
奥様は、戦う力も人からの信頼も、友人、さらにはあの方という旦那様まで、何もかも手にしている満ち足りた人間だと思っていたけれど。
あの方から奥様に関する話はよく聞くけれど、こういった彼女の身の上の話は聞いたことがない。
きっとそれは『話したくない』んじゃなくて、ただ単にあの方が『知らないから話せない』だけなんだろう。
未来の旦那様であるあの方にまだ話していないことを話されてると思うと、なんだかどきどきする。
特別なんじゃないかと、自分だけを見てくれているんじゃないかと勘違いしてしまう。
「童磨が『教祖様』してる時どんなこと考えてるかなんて知らないけど、私はあの時は辛いことの方が多かったから。人の話ばかり聞いて、理想押し付けられて。なんか私たち似てるなあと…
だから童磨はどうなのかなって思ってね、ちょうどいいや寄っていこうって思ったんだよ」
息抜きだって、教祖様にも必要でしょ。
そう話しながら奥様は俺の髪の毛で遊び出す。
なにこれセットどうなってんのと訳の分からない事を言いながら触る奥様が、なんだか愛おしい。
俺のことを、気遣ってくれたのだ。
感情なんてよく分からないと思って居たけれど、なんだか嬉しさと愛おしさで胸が暖かくなっていく。
ああ、この人があの方の奥様じゃなかったら今すぐにでも手に入れたのになぁ。
「あの方はずるいなぁ」
「なんで?????」
「だってこんなにも相手を思いやれるような人が妻だなんて、贅沢にも程があるよ」
「何度も言うけど結婚するなんて一言も言ってないからね」
「あの方とうまくいかなかったら俺のところにおいでよ!大事にするぜ」
「聞いちゃいねぇ」
本当は、ほんとは喉から手が出るほどに欲しいけれど。今はこうして傍で話していられるだけで幸せかな。
いつかは自分のものに、だなんて考える自分は相当な欲張りだ。
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Nami - 冨岡さんに嫉妬する他の鬼滅メンバー面白かったです♪冨岡さん好きだぁぁ♥ (2022年11月4日 11時) (レス) id: 7f8b02d024 (このIDを非表示/違反報告)
もろん - 最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です最高です(言い過ぎてごめんなさい) (2021年6月11日 17時) (レス) id: 2c8540451a (このIDを非表示/違反報告)
マロ(プロフ) - ひかりさん» 夢主ちゃん…君少し贅沢過ぎては…羨ましい!!! あんな素敵な声で囁かれたら気絶しちゃいますよ!? あぁ……好き… (2020年4月4日 1時) (レス) id: d8cf0d1c15 (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - マロさん» 無惨と結婚したらあのいい声で囁かれていい顔を毎日拝めるんですよね……至高の幸せですよね………… (2020年4月4日 0時) (レス) id: a5a72bcd0d (このIDを非表示/違反報告)
マロ(プロフ) - 無惨と結婚!? やだ…切実にお願いしたいです……無惨の笑みとか絶対素敵じゃないですか… (2020年4月2日 23時) (レス) id: d8cf0d1c15 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひかり | 作成日時:2020年3月28日 10時