【鬼滅の刃】夢に惹かれる【愛され】

さだめ。 ページ44

思い返せばとんでもない人生を歩んだ。




望んでなった訳でもないのに神の愛子だなんだと崇められ、多数の制限がかけられた生活を強いられ。




私は家族のことを家族だとは思っていなかった。


ごく稀に神社へやってくる親子が纏っている気と、私達の気は全く違う。愛情がない。私を己の娘として愛してくれている訳ではなかった。







だから。本当に最低だけれど、鬼に家族を惨殺されたあの日、私は心のほんの隅っこのほうで少しだけ安堵した感情を抱いた。だから私は冷静でいられたのだと、今となっては思う。





家族と言えるような家族はいない、友達ももちろんいない。


恐らく、というか事実、私は人としていくらかの感情が欠落していたと思う。己の思うままに行動することは許されていなかったし、常に私は真顔だった。








そんな以前の私を今の私へと変化させてくれたのが、産屋敷耀哉さまによって紹介された育手のお師匠さまである。






彼は空の呼吸の使い手で、結構大雑把な性格だった。明るく朗らか、よく笑いよく泣く。感情豊かなお人だった。



私が空の呼吸を上手く使えなかった時も、決して攻めることなく自分に合った呼吸法をうみ出せばいいと励ましてくれたお師匠さま。彼のおかげで私は現在の夢の呼吸を会得した。



お師匠さま、お元気だろうか。結局、鬼殺隊になってから1回も会いに行けなかったし、手紙を出したのも片手で数えられるほど。もっと出しておくべきだったと、今更ながら後悔した。




お師匠さまが私の性格を明るくしてくれたおかげで、私は炭治郎や善、伊之助や柱の皆さん…数え切れない人達と縁を結ぶ事ができた。かなり個性的な人ばかりだったけど、みんな、みんなみんな大好きなひとたち。





私は、そんなみんなに死んで欲しくない。









初めてだった。初めて大事だと思える対象ができた。


それを守らずしてどうすればいいと言うのだろう。







いい人だった、本当にいい人たちばかりだった。





ある種、私は無惨にも感謝している。

そもそも家族が鬼に襲われなければ、今の私はここにはいないのだから。








感謝してもしきれない、返しきれない恩が山ほどある。




だから私は、みんなを守るために、己の運命に従うために。









無惨を地獄までお送り致しましょう。









もう二度と無惨が過ちを犯すことが無いよう、＿＿として、責任をもって地獄までついていって送り届けますから、安心して欲しい。

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