【鬼滅の刃】夢に惹かれる【愛され】

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ちらりと脳裏に浮かんだ子供、炭治郎の姿を消し去り、玉壺は唇を噛む。







あまりにも涼し気な顔でこちらに刀を向ける無一郎に混乱していた。先程玉壺が食らわせた攻撃で毒を受けた無一郎は、体が麻痺しているはずなのに。









｢(それなのに、なぜさっきよりも尚早い動きで私に傷をつけた)｣









つぅ、と玉壺の鎖骨あたりから血が流れるのを見て無一郎は目を細める。




彼の脳裏には、先程交わしたAとの会話が再生されていた。







『無一郎くん、ここのことは頼める？私、炭治郎たちの方に行こうと思うの』


『い、行っちゃうの？距離がどこまで離れてるかも分からないのに…それにA、方向音痴じゃん』


『だ、大丈夫、そこはなんとかなる！

ここには柱の君がいるけど、向こうはそうじゃないから…数が多い方がいいでしょ！

無一郎くんも毒を食らってて心配だけど…でも大丈夫な“気”を感じるの。だけど一応、無一郎くんにはおまじないをかけておくね』








そう言って彼女は無一郎の手を両手で握り、何か力を込めるように目を閉じる。




数秒後、彼女は『任せたよ！』と言って走り去っていった。









先程、欠落していた記憶を取り戻した無一郎は今までと一味違う。



きっ、と目の前の鬼を睨みつけて踏み込んだ無一郎を血鬼術が襲う。









｢＿＿＿蛸壺地獄！！！｣









玉壺の身体中から蛸足が出る。それは無一郎を取り囲むようにして広がり、刀を振り下ろしても断ち切られない。







｢時透殿！！｣








鉄穴森の声とともに無一郎の刀が折れた。瞬間、蛸足がより勢力を増して小屋をも破壊する。









｢どうだこの蛸の肉の弾力は！！これは斬れまい！！｣









蛸足で無一郎と近くにいた鉄穴森を巻き上げながら、玉壺は鋼鐵塚を見やる。小屋を破壊され、蛸足にはね飛ばされたにも関わらず、今だに刀を研ぎ続ける鋼鐵塚に玉壺は呆れた。








あの刀鍛冶は後、まずは柱。







ギチギチと蛸足の締め付けを強くしながら、玉壺はニタリと笑った。





しかしそれもつかの間。




一緒に締めあげられていた鉄穴森が持っていた無一郎の刀を素早く鞘から抜き取り、目にも見えぬ早さで足を切り落とす。





ボトボトと足が落ちてゆく中、たん、と綺麗に着地した無一郎はおもむろに口を開いた。









｢俺のために刀を作ってくれてありがとう、鉄穴森さん｣









＿＿＿ああ、この刀、しっくりくる。

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