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土方side


「そりゃそうよ。目が見えないかわりに、耳と鼻が発達したの。」


「目は見えないけど、その分色んな想像ができる。
外で遊んでる子供たちの笑顔とか…
看護師のおしゃべりとか。」


「その想像の答えはきっと永遠にやって来ないけど、それでもいい。
だって何も知らないまま見えないだけで人生の色がなくなるのは、つまらないじゃない。」


こいつは、自分がどう笑うかも見たことはないのだろうか。


今の浅井は、とても綺麗な顔で笑っている。


俺にも想い人とやらが一人いたが、それでもそいつは綺麗だと言いきれた。


なんだか心なしか、《あいつ》を思い出す。



「土方さん?黙っちゃってどうしたの?」


「あ?…ああ、ちょっと考え事をな。」


そう言うと、浅井はまた微笑んだ。


「土方さんが考え事か…どんな表情(かお)してるのか見てみたいな。」


「見ても得も損もねえぞ。」


「いやいや。私、土方さんみたいにまともにおしゃべりしてくれる人は初めてなんです。」


「え?」


「私、普通にこうしてると、瞳も開いていて、一見すれば濁ってるだけで青い目でしょう?

けど、本来は茶色なんです。

初めて出会った人に、私が盲目だって伝えると、どうしても距離を置かれるんです。

だから土方さんのように普通におしゃべりしてくれるなんて、少し嬉しくて…。」


土方さんのお顔をちゃんと見て、いつかお礼したいなって。


浅井はそう言うと、またあの笑顔を見せた。


「…お前、目はもう2度と治んねえのか?」


「…そんなことはないんですが…。

独り身な上に盲目と来たら収入なんて支援金くらいしか頼るものはなくて…

目の治療に費やす資金なんて雀の涙程もないんです。」


「そうか…わりいな、無神経なこと聞いて…」


浅井は首を振るとまた笑った。


「でも普通に生活は出来るんで、今のところ治すつもりはないです。」


「それも選択肢のうちの一つなのか。」


感心したように言うと、


「そうですよ。完治できるならもちろんやってみたいですけど、それで生きていけなくなったら本末転倒です。」


「まあな。」



生きるために、そいつは視覚を捨てた。


俺はそう解釈した。


「すげえよ、おめえさんは。」


「そうかしら。私はただ本音を言ってるだけなんで。」


また笑った。


「そうだ。ルームメイトも出来たし、1度やって欲しいことがあるんです!」


「やって欲しいこと?」


「読み聞かせ…してほしいんです。」

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hikari(プロフ) - 若葉さん» ありがとうございます!正直に言う行き詰まっていたのでそう言っていただけただけで嬉しいです! (2017年4月16日 18時) (レス) id: c3febc506b (このIDを非表示/違反報告)
若葉(プロフ) - 完結おめでとうございます。少し不思議な話で、ちょっと好きな雰囲気でした。これからの活躍も楽しみにして居ます。 (2017年4月16日 9時) (レス) id: 3d0a97c40b (このIDを非表示/違反報告)
hikari(プロフ) - すずさん» ありがとうございます!なかなか更新が滞り申し訳ないです! (2017年4月4日 1時) (レス) id: c3febc506b (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 毎日、更新楽しみにしてます! (2017年4月3日 23時) (レス) id: 2283804e7c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:hikari | 作成日時:2017年3月28日 21時

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