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「大事をとって損はないだろ?」
近藤はため息まじりに文句を言う土方を半ば諌める形で返した。
「ないわけじゃねえが、今なんか巷じゃあ攘夷志士の活動が頻発してるらしいじゃねえか。
そんな時にトップの俺が入院してちゃあ衆がもたねえ。」
小さくなったタバコを灰皿に押し付けて、土方はまた返した。
「たかが肩の怪我如きじゃ入院なんてしちゃいられねえよ。」
「たかがじゃないさ。肩は刀を振るうための大事な部分だ。
それを怪我したら刀もクソもありゃしない。
トシは脳みその8割が仕事みたいだな。
仕事熱心なのは感心だが、仕事人間はおすすめしないぞ?
少し肩の荷を下ろしたらどうだ?」
近藤はそう言い残して、土方の自室を出ようと立ち上がった。
「なあ近藤さん。」
「どうした、トシ。」
「少し相談があるんだ。」
土方はそんな近藤を引き止めた。
先程と様子の違う土方に、近藤は些かの違和感を覚えつつ目の前にいる部下の言葉に耳を傾けた。
「相談なんて珍しいな、トシ。なんだ、なんでも言ってみろ。」
立ち上がった腰をもう一度胡座をかきながら下ろした。
「…ここんところ、女中の体調が悪いだろ。」
新しいタバコに火をつけながら、土方は言葉を繋いだ。
「ああ。そうだなあ。あの人も歳だからな。」
「新しい女中雇う必要があると思うんだよ。」
「新しい女中か。確かになあ。そしたら募集掛けてみるか。」
「あ、いや…そのだな…」
土方は後頭部に手をやり、なかなか言い出せない言葉をなんとかして出すように深呼吸をした。
「…女中候補が、いんだよ。」
「女中候補?」
_____ザザ__『こちら一番隊隊長沖田総悟ー、』
『土方さーん。ちょっと市中見回りしてたんですが、厄介なことになってやす。
至急応援頼んまァ。』
土方は『女中候補』を説明しようとして口を開いたら、近藤の無線に沖田のやる気のない声が響いた。
「…ったく。」
土方はタバコをまた灰皿にねじり、もう一度新しいタバコを取り出して火をつけた。
「詳しい話は、また時間がある時にするから、とりあえず募集はしないでくれ。」
「…あ、ああ。わかった。」
土方のその言葉に、また違和感を感じて首を傾げた。
隊服を着て、土方は外に出ていった。
「やっぱりあいつらは俺がいなきゃダメなのかよ…ったく。
頑張ったんですからってどの口がいいやがる腰抜け共め。」
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hikari(プロフ) - 若葉さん» ありがとうございます!正直に言う行き詰まっていたのでそう言っていただけただけで嬉しいです! (2017年4月16日 18時) (レス) id: c3febc506b (このIDを非表示/違反報告)
若葉(プロフ) - 完結おめでとうございます。少し不思議な話で、ちょっと好きな雰囲気でした。これからの活躍も楽しみにして居ます。 (2017年4月16日 9時) (レス) id: 3d0a97c40b (このIDを非表示/違反報告)
hikari(プロフ) - すずさん» ありがとうございます!なかなか更新が滞り申し訳ないです! (2017年4月4日 1時) (レス) id: c3febc506b (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 毎日、更新楽しみにしてます! (2017年4月3日 23時) (レス) id: 2283804e7c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:hikari | 作成日時:2017年3月28日 21時