15(改変) ページ17
「あいつらはよくサボる。」
そう言うと、土方は頭を抑えた。
「そうなんですか。」
「ああ。ろくに仕事もしねえで、トップは好きな女おっかけて、部下共は何かやらかす度に始末書を放り投げる。」
「あらまあ。」
「あいつらは野生だ。こんな縛りばかりの所にいるから頭をやっちまったらしい。」
そう言うと、Aはくすりと笑った。
「なんか、土方さんって…ちゃんと上司なんでしょうけど、話聞けば聞くほど寺子屋の先生みたいですね。」
「寺子屋?」
「部下の方々を語ると、一気に優しい声になります。」
土方はその言葉を聞いて、訝しげに眉を顰めた。
「んなこたァ絶対ねえよ。俺が巷でなんて呼ばれてるか知ってんのか?」
「え?」
「鬼の副長だ。鬼だぜ鬼。鬼が先生になれるかってんだ。」
土方は照れを隠すように返した。
「なれますよ。」
「…。」
そしてAはふふふと笑った。
「私も昔、鬼と呼ばれていたんです。」
「は?」
「私のどこが鬼だと思います?」
「…わかんねえ。」
「目です。」
土方は驚いたように、Aの方を見た。
「…目…が、なんで…」
「この目、以前目が悪いから濁っていると言いましたよね。」
「…本当は、私…」
土方は、思い詰めるように俯くAを見て、息を呑んだ。
「天人とのハーフなんです。盲目だけじゃないんです。」
「……………は?」
突拍子もない、あまりに浮世離れした告白に、土方は目を丸くした。
そして絞り出した言葉もたったの一文字である。
「…天人のハーフ?」
「はい。私の母は私を産んでからとても病気がちになりました。」
「母は風邪ひとつひかないとても丈夫な人だったのに。
不思議だなって思って、母に聞いたんです。」
「そしたら、天人との子供だってか。」
「はい。私も、正直びっくりして。
次の日、どこから聞きつけたのか、近所の子どもは全員私を無視するようになりました。」
「私を見て、ひそひそと話す言葉には、よく『鬼の子』だと揶揄されてました。」
「私は何もしていないのに、どんどんとそれは酷くなって、いつの間にか自分の家にも罵言雑言を書かれた紙が、玄関に貼られるようになりました、」
「母はそれを見て、毎晩泣いていました。
祖母もいたのですが、母の代わりに家のことを沢山やっていました。
苦しくなった私は半ば逃げ出す形で、16で家を出ました。
この時はまだ目が見えていました。」
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hikari(プロフ) - 若葉さん» ありがとうございます!正直に言う行き詰まっていたのでそう言っていただけただけで嬉しいです! (2017年4月16日 18時) (レス) id: c3febc506b (このIDを非表示/違反報告)
若葉(プロフ) - 完結おめでとうございます。少し不思議な話で、ちょっと好きな雰囲気でした。これからの活躍も楽しみにして居ます。 (2017年4月16日 9時) (レス) id: 3d0a97c40b (このIDを非表示/違反報告)
hikari(プロフ) - すずさん» ありがとうございます!なかなか更新が滞り申し訳ないです! (2017年4月4日 1時) (レス) id: c3febc506b (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 毎日、更新楽しみにしてます! (2017年4月3日 23時) (レス) id: 2283804e7c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:hikari | 作成日時:2017年3月28日 21時