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「んだあのクソジジイ。死にかけで何言ってんのか全くわかりゃしねえ。」
「寝てたんだから何言ってても聞こえないくせに。」
「うるせえ。」
「それより腹減った。」
「食堂あるよ。食べる?」
「次の授業?はねえのか。」
「うん。暇。一時間半暇。」
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俺の前を歩く背中は頼り甲斐があるけど、小さな背中。正された背すじからは育ちの良さが見えた。
「…何で俺を連れてきた。別にいくらでも男はいるだろィ。」
「…うーん…私基本的に男が大嫌いなんだよね。」
「はあ?」
「別に沖田くんのことを男として見てないとかじゃなくて、私はあんまり男の人に自分の内側を見せたくないっていうか。
まあ、心を許せてたのが前に言った元カレだったり、沖田くんだったりするわけ。」
二人でそれぞれ買った定食を食べながら、雑談。
「おまえ、俺に心を許してたのか。」
ちょっと、嬉しい。
「まああんな道の真ん中で恥さらしもしたし、家まで知られて、週刊誌にも載った。もう心を許すしかないよ。
それに、悪くないよね。」
「何が。」
「沖田くんといるの。割と楽しい。」
「割とは余計だろィ。」
「私はただの人間だし、毎日生きるのもめんどくさいってくらいのものぐさなの。
でも沖田くんといるとそんな気持ちも薄れて、生きるのも悪くないよねって、自分の目標へ頑張って進みたいって気持ちが強くなるの。
沖田くんといると、自分がちゃんとできる。」
そう語るAの顔はとても明るかった。
その言葉を聞く俺の顔は、多分綻びもしてないただ無表情なんだと思う。
これは仕方のないことなんだ。
俺が真選組として上京したとき、姉上を故郷に置いてきた。後悔はたくさんあった。
真選組の一番隊の隊長になったとき、はじめて部下が殉死したとき、親しい奴が裏切ったり、大切な人の大切な人が悪人だったり、すげえ強い奴が組織を乗っ取ろうとしてたり。
その度に俺はこの世の汚さを恨んだ。
その度に俺はきっと誰かがいつかこの世界を変えてくれる、そんな気でいた。
「もしさ、沖田くんが良かったら私の意識を高めるために側にいてくれないかな。
まあメシ友みたいな扱いは今も納得は行かないけども。」
「……ちゃんと、言え。」
「Aは、俺のこと好きなんだろィ。」
もう、自分の激情なんかには酔わない。
自分の本音と向き合おう、目の前のアバズレを見て思った。
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ふゆき(プロフ) - 歩く中二病@ごりらーさん» お気遣いありがとうございます。 (2018年8月30日 20時) (レス) id: c3febc506b (このIDを非表示/違反報告)
歩く中二病@ごりらー(プロフ) - 続き、楽しみにしてます!無理しない程度に頑張ってくださいね (2018年8月30日 20時) (レス) id: c177f1386f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふゆき | 作成日時:2018年8月30日 2時