猫14匹 ページ14
「…でもお前が何も言わないから全部言えた。少しは楽になった。
今度は猫缶でも持ってきてこっちに来る。そんときにいたらまたぼちぼち話を聞いてくれないか。」
それからもうずっと土方は私の隣でべらべらと己のわだかまりらしきものを話し続けていた。
気づけば日が沈む直前で、そこかしこでいい匂いのした煙がもくもくと浮かぶ。
土方は胸ポケットからもう一本のタバコを取り出して火をつけた。
私の頭を今も慣れない手つきで撫でると、土方はそのまま別の方向へと歩いていった。
その背中は随分と大きくて、今聞いた話の何倍も辛いことや悲しいことを背負ってきたことを物語っていた。
(…土方、にゃんて呼び捨ててごめん。)
これからは土方さん、って呼ぶことにする。
・・・
(それにしてもこの姿じゃどこにも帰れない。)
たまたまこんな姿になってしまったのは、私が普段から必要に迫られない限りお金を持ち歩かない癖と、小石が寝起きの悪い男に当たってしまった不運さによる。
それに追いかけられてあの猫又神社にたどり着いてしまった。だから本当はあそこに行く道など知らないのだ。
寝る場所もないのだからこれから生きていくことすら難しいのかもしれない。
「──おい、猫。」
「…にゃあ…」
コツ、コツ。
一度聞いたリズムの足音は、私の方へ近づいてきた。
また振り向くと、もちろんそこには沖田総悟。彼の右手には小さなビニール袋と毛布。
「…お前、どうせ野良だろィ。これ食え。」
「…にゃあ…」
沖田はビニール袋から猫缶を取り出した。プルタブを引っ張って開けるとそのまま私の前に差し出した。
(つ…つられにゃ…つられにゃ…つられにゃい…はずにゃのに…)
めっちゃ美味そうな匂いするやんな!!
私は沖田の差し出した猫缶に某海賊漫画の主人公よろしくガツガツと食べ始めた。
マグロのいい匂いのするそれは私の腹を不思議と満たしていく。これは美味しいぞ。
私は餌をくれた沖田に頭をこすりつけると、沖田は見たこともないような優しい顔をして私の頭を撫でてくれた。
「…俺とそっくりな毛の色していやがるな、お前。俺もお前と同じ栗色でィ。」
「にゃあ。」
黒い上着についた猫の毛は、確かにさっき見た私の栗色の毛。
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インク(プロフ) - ふゆきさん» 完結おめでとうございますw沖田くんが不器用なのは知ってた←そこが可愛いんやろ。沖田くんは私の中ではいつまでも好きなキャラ1位だな(`・ω・´)キリッ (2018年3月7日 16時) (レス) id: 2fb63eb0d6 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆき(プロフ) - インクさん» 夢女子は悪くありませんよ…(・∀・) (2018年3月6日 23時) (レス) id: c3febc506b (このIDを非表示/違反報告)
インク(プロフ) - 更新されるたびにヒヤヒヤしてます...沖田くん、頑張れぇ... (2018年3月6日 23時) (レス) id: 2fb63eb0d6 (このIDを非表示/違反報告)
インク(プロフ) - そもそもが人間なんだからしゃーないしゃーない。てか、それを受け入れろよ。現実を受け入れろよ沖田くん←現実を受け入れずに夢小説に現実逃避してるのはどこの誰でしょーねー。分かったらさっさと自分の将来とか考えろや(ヒィ!すみませんでした!)という茶番でしたw (2018年3月5日 19時) (レス) id: 2fb63eb0d6 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆき(プロフ) - まかろんさん» ありがとうございます!沖田は絶対猫派だと信じてますからね。はい。 (2018年3月4日 18時) (レス) id: c3febc506b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふゆき | 作成日時:2018年2月25日 15時