事 ページ8
「全く、朝から大人気ないことはしないでください!」
新八はカンカンに怒りながら俺の布団をしまい、神楽ちゃんをひっぱって居間まで連れていった。
神楽は不機嫌だったが、出された朝ごはんに目を輝かせた。
(夜更けのことは忘れてしまおう。)
そうだ。あいつにあったことは全部なかったことにすればいい。
そうすりゃあ、あいつの願うとおり別の女へと踏み出せる。
遊ぶのはまだ若いが故の特権である。年上の女に振り回されるなんて童〇みたいで甚だ苛立ちを覚えるってもんだ。
俺は煮物を口に入れつつ、そんなことを考えていた。
「そういえば銀さん、昨日の夜はどうしたんですか?」
「どうしたもこうしたも飲んでたんだよ。わりいかよ。」
「いやそうじゃなくて、実は今朝がた帰ってきた姉上が足取りの不安定な銀さんを見かけたみたいで。」
「千鳥足じゃないアルか。」
「僕もそう聞いたんですけど、千鳥足ではないみたいなんです。」
で、銀さんどうかしたんですか?
(見られてた…)
「…いや、空きっ腹に酒を流し込んだら吐きそうになってよ。多分そのことだ。」
「ほんとですか?」
「当たり前だろ。」
まさか言えるわけがないのだ。
いつも威張っているようなこの店の主がただ一人の昔の女に再開してショックを受けていたなどとは。
確かに何時間か前ではあるが、帰り道Aに捨てられてうつらうつらと歩いていたのは覚えている。
「…まあ、銀さんが言いたくないなら、それでいいですけどね。」
「はあ?だから嘘じゃないって…」
「銀さんは嘘が下手なんですよ。ね、神楽ちゃん。」
新八は隣でがむしゃらに朝飯をかっ食らう神楽にそう言うと、そいつもこくりと頷いた。
「いつも嘘ついて誤魔化してるのバレバレですから。」
「どうせ昔の女に会ってフラれたとかそんなもんアル。女の勘ヨ。」
「ガキのくせに大口叩いてんな。俺のことはいいからさっさと飯食って神楽は着替えろ。」
今日は三件仕事あるからな。
「だったら早起きしてくれませんかね。」
「それとこれとは別問題。」
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作者名:hikari | 作成日時:2017年12月22日 23時