【坂田銀時】いざよいの華【銀魂】 (ページ29)

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「………あ。」

「…………万事屋の人。」

神様ってのは、ガチドッキリに命かけてんのかな。

なんの運命なのか、俺は昨日追い返した女が目の前に現れた。

「…あの、すんません。この前…」

俺は女の前へ歩いていき、そのまま謝ろうと腕をとったらそいつは『ひっ』と悲鳴にも似た声を上げて俺の手を払った。

「ご、ごめんなさい…」

「………俺、坂田銀時といいます。」

「…知ってます。」

「…万事屋の社長で…」

「知ってます。」

「…親切なあなたのことを追い返した、無礼野郎です。

どうか、許してくれとはいいません。ですが、お詫びくらいはさせてくれませんか。」

普段他人にここまで丁寧に接することなんてないから、慣れない敬語にどもるどもる。

俺はしきりに深呼吸をし続けてどうにか女を繋ぎ止めようとしていた。

「…お詫び…？」

「は、はい！」

「…いいですよ、別に。私、付き合ってる男性がいるので、お詫びでもなんでとサシで男と出かけるとなると相手が怒りますから。」

「…じゃあ、せめて…名前を。」

「………私の名前は、」

「藤沢Aです。」

「Aさん！」

「なんですか？」

嗚呼…

嗚呼なんで…

なんでこんなに…必死なんだろうか。

「…その男と別れたその時に、お詫び、させてください。俺はいつでも万事屋で待ってます。」

(本当に口説きてえ奴にァ、うまくいかねえもんだな。)

Aは俺の言葉を聞いてか顔を見てか、クスリと凝り固まっていそうな口角を上げて笑った。

俺はその日、初めて彼女の世界で一番綺麗で魅力的な笑顔を見た。

月明かりに咲く花。俺はそう思った。