□かみさまとおやこ ページ28
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―――夢を見た。酷く現実味を帯びた、逃れられない未来の夢を。
勢い良く瞼を押し上げる。耳の奥には、あの両親に腕を掴まれて、こちらに手を伸ばすAの声が残っていた。瞼の裏には、泣きながら助けてと懇願するAの悲痛の表情が、鮮明に残っている。
体を緩慢な動作で起こすと、そこには知らない景色が広がっていた。とは言っても眼鏡がかかっていなかったので、殆どボヤけているが。
眼鏡は、僕が寝ていたソファーの近くに設置された机にちゃんと置かれていた。手にとってかけるとレンズにヒビが入っていたが、まぁ、なにも見えないよりはマシだろう。
「―――やっと起きたか」
「っ……貴方、は」
心の準備を済ませる前に背後から声が飛んできて、肩が跳ねる。声の方では、壁にもたれ掛かった長身の男性が、こちらをじっと見下ろしていた。襟足に添えられた赤色が特徴的な人だった。
彼はソファーに腰かけたままの僕の元に歩み寄ってくると、青色のジャージのポケットに手を突っ込み、吐き捨てるようにして一言溢す。「ふざけてんのか、あんた」事情の説明でもなんでもない、ただただシンプルな罵倒に僕は虚を衝かれたように目を見開いた。
「子供の前で死にかけるなんて、あんた親失格だぞ」
「……お、や……」
「あの子は……Aは、あんたの大切な【娘】なんだろ。だったら、最後まで守るべきなんじゃねーの。別にお前がいつ死のうがどーでも良いけど、あの子を悲しませるのだけは、俺はぜってー許さねぇから」
強く荒い口調の端々には、隠しきれない優しさが滲んでいた。この人だけは、僕とAを【親子】として見てくれていた。【犯罪者】と【被害者】ではなく、ちゃんとした【親子】として。
彼が僕らのことを知っていることは、言葉にしていなくともなんとなく感じ取れた。知っている上で、この男性はこう言ってくれているのだ。
―――親なのだから、娘を最後まで守り抜け、と。
なんてことない、と思いながらも、結局はどこかでじわりじわりと傷ついていたのかもしれない。
どう足掻いたって本当の家族にはなれないと突きつけてくる世界に、僕は、言い様の無い虚しさを感じていて、それでも尚、見て見ぬふりをしていたのかもしれない。
どうでも良いと思っていたのに、心のどこかでは、誰かにこうして認めてほしいと、思っていたのかもしれない。
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阿部葵(プロフ) - 授業中なのに一気読みしてしまった､､、それぐらい面白かったです!! (10月23日 11時) (
レス) @page50 id: 9bdf52cb2f (このIDを非表示/違反報告)
レオ - 涙とともに語彙力が抜け落ちてしまったんですけどいいお話すぎてめちゃめちゃ泣けました。 素敵なお話ありがとうございました (2022年3月1日 5時) (レス) id: 4d31a55c6b (このIDを非表示/違反報告)
みそら - ほんっっっとにいいお話でした！もう涙が止まらないし、、心臓鷲づかみにされました。素敵なお話ありがとうございました！ (2021年8月13日 3時) (レス) id: b1ecf40e27 (このIDを非表示/違反報告)
百舌鳥(プロフ) - あああ!(泣)なんだよ、涙で前が見えねぇよ!!。こんなことならティッシュじゃなくてハンドタオル準備するんだった!!。､､､誘拐事件のニュースを見ただけでどっちが悪いかを自分も考えなきゃいけない。頭ではわかっても本当に裏側を見る努力を自分はしてなかったんだな (2021年8月3日 21時) (レス) id: 47ce5ea5c1 (このIDを非表示/違反報告)
神ちゃん - 感動すぎて号泣です。今までで、一番良い話でした！泣きすぎて語彙力がなくなってしまいましたが、とりあえず、素敵なお話でした！この作品を書いてくださり、ありがとうございます。 (2021年7月3日 21時) (レス) id: 2fdd422fa8 (このIDを非表示/違反報告)
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