ほっとひといき３【梅原裕一郎】 (ページ10)

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なんだこの状況。

裕一郎からの「車でスタジオまで迎えに来て」「助けてくださーい」とかいうふざけたメッセージを受信するなり、何事かと割と早足で駆けつけたのだ。

ようやく指示されたスタジオに辿り着いたと思ったら、自分の恋人が若干見覚えのある女の子に口説かれている。
そしてなんか自分の悪口が聞こえたような気もする。

「か、神代さん！？」

『は、はい …どうも？』

流石にバツが悪いのか、スタッフの女の子はチラチラと様子を窺うようにこちらを見ている。

こっちも居心地悪いのだが、この状況を作り上げた張本人はニヤニヤと笑いながらAの肩に手を置いた。

「ってことで、これから俺たちアフ6デートなんで仕事のときに、またよろしくお願いします」

『アフ6って… まだ5時じゃん』

「アフ5 どこ行きたい？」

『カラオケ』

「じゃあ決定どっか駐車場がある所あったかな」

歩きながらスマホで調べ始めた裕一郎に続こうとしながら、そういえば…と恐る恐る振り返ってみる。

泣くのを必死に堪えたような形相の彼女が、こちらをジッと見つめていた。

うぐ、その顔はヤメテ…。

『あの…、なんだったら友達の声優さんとか紹介しますよきっとモテモテだと思います…たぶん』

「い、いらないです！私は梅原さんが…！」

「お気持ちだけ頂きます」

今度は裕一郎が振り返ってピシャリと言う。

「巨乳にムッチリはAVで間に合ってるんであなたの言う＂貧相な身体＂のコイツで俺は満足できます」

『なッ…！』

とうとう涙腺が決壊した彼女を後に、Aは裕一郎に腕を引かれて出て行った。

「ごめん、なんか謎の茶番に付き合わせて」

『やっぱり＂貧相＂って言ってたんだ…聞き間違えじゃなかった…』

「そこかよ俺は結構気に入ってるよ、お前の身体」

車の助手席に乗り込み、裕一郎は珍しく機嫌をうかがうようにこちらを覗き込んだ。

『身体だけ？』

「……なわけねーだろ、全部だ全部」

若干投げやりな気もしたが、珍しく裕一郎が素直になってくれた。
巻き込んで申し訳ないと思ってるのだろうか。

たまにでもこんな素直な裕一郎が見れるならまあいっか、とアクセルを踏みながらそっと微笑んだ。