ほっとひといき３【梅原裕一郎】 (ページ18)

今日:6 hit、昨日:15 hit、合計:64,425 hit

当日ページ18

____________________________

「旦那様のお支度の方ももうとっくにお済みになられてるそうですよ」

この日のために切らずに伸ばしていた髪の毛を結い上げると、ヘアメイク担当の女の人は品良く微笑んだ。

長い純白のドレスの裾が汚れてしまわないように軽く自分で持ち上げ、同じく白色のタキシードを着ているであろう裕一郎の元へ行こうとする。

「あ、旦那様の方からこちらにいらっしゃるって」

そう制止されたとき、タイミング良く支度室の扉がノックされた。

「入ってもいい？」

『いいよ』

扉越しにもよく通る低い声に軽く返事をすると、ゆっくりと扉が開き裕一郎が顔を出す。

珍しくセットされたセンターパートの髪型に、新郎らしい純白のシャツとシルバーのタキシード。
新郎というより王子様という言葉の方がしっくりくるような似合いように、感動を通り越して思わず吹き出してしまう。

「何人の顔見て笑ってんだ」

『いや…、ごめんww あまりにも様になっててwww』

本人の性格とは相反し、王子様然とした服の着こなしは裕一郎の十八番なのだ。

「それを言うならお前もだろ」

『え』

珍しい裕一郎の褒め言葉に目を丸くしていると、ドレスの着付けを手伝っていた女の人が「そうでしょうそうでしょう」と言わんばかりにニコニコ微笑んでいる。

「ちょっとこっち向いて」

『ん？なに…』

パシャリ。

いつのまに取り出したのか、裕一郎はスマホで私の写真を撮っているようだ。
たまに嫌がらせのように写真を撮ってくることしかなかったのに、今日は珍しいことだらけだ。