二百八十四 ページ34
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金塊争奪戦から数十年の時が経ち、月島基特務曹長は自身の直属の上官の執務室の扉をノックしていた。
「閣下、お迎えに上がりました」
「うむ、もうそんな時間か 午後からは会議があるから手短に済ませるぞ」
「珍しいですね 毎年この日はなるべく軍務を減らしているというのに」
「南満州の方で関東軍がまたきな臭い動きをしているのだ 我々第七師団は対露…、いやソ連に睨みをきかせているとはいえ、会議には出席せねばならん」
鯉登音之進は、第七師団を牛耳っていた鶴見中尉の造反の咎と父親である鯉登平二の越権行為の汚名を長い時を経て返上し、今では亡き父と同じ少将という位にまで登り詰めていた。
その栄達ぶりはまるで鯉のように滝を登り龍となって、長年日陰物だった第七師団を率いるまでに成長していた。
月島は慣れた手つきで外套を羽織らせてやると、足早に執務室を出ていく鯉登の後ろに従う。
二人は鯉登の所有するイギリス製の自動車に乗り込み運転手に行き先を伝えると、ようやくホッと一息ついた。
その堂々たる風格で周囲の厳しい目を跳ね除け続けた鯉登少将ではあったが、長年彼に付き従ってきた月島にとってはあの頃の幼くわがままな鯉登少尉の面影が記憶から消えない。
敵ばかりの陸軍内で常に気を張っているせいか、こうして二人きりになると鯉登は素を見せるのだ。
「見ろ月島、今年はキャラメルだ」
外套のポケットに忍ばせた可愛らしい紙箱をカラカラと振って見せてくる。
「近頃女子供の間ではコレが流行っているとウチの女中に教えてもらったんだ」
「へえ、箱に入っているのを初めて見ました」
「そうだろう！
車が到着したのは郊外にひっそりと佇む小さな墓地。
そこにあるこれまた小さな墓石の前で、鯉登と月島は揃って足を止めた。
周りにあるものとは違いその墓誌には名前が彫られておらず、ただ一言��偲ぶ��とだけ刻まれている。
鯉登は墓の前に片膝をつくと、数枚の木の葉を墓誌から払い落とす。
「A、感謝しろ 今年も来てやったぞ いつものようにこれから他の者の墓も回るつもりだが、全く… 年中墓参りばかりでは私の身も保たん」
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なお(プロフ) - 最後の結末はあの花を意識されてますか！？ (5月6日 11時) (
レス) @page46 id: b9f10e639b (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - 塩トマトさん» いつも感想とてもモチベになりました！こちらこそ長く読んでくださってありがとうございました (2月26日 16時) (レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - べちゃべちゃだいこんおろしさん» 泣いていただけてこっちも感涙です…！完結できてよかったです (2月26日 16時) (レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - 豆腐プリンさん» うわ〜いつも感想とても励みになりました！ありがとうございます (2月26日 16時) (レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
塩トマト(プロフ) - 完結おめでとうございます！ずっと素敵な文章と物語に感動と喜びと驚きとドキドキで満たされました！ありがとうございました！ (2月26日 15時) (レス) @page46 id: ce7328f6ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽなふ | 作成日時：2024年1月23日 23時
