二百八十二 ページ32
Aの声に、尾形の中で何かが壊れ始めた。
半狂乱になって、尾形は頭を振る。
「アイツを殺した後悔などしとらんッ！！罪悪感なんて…ッ！！」
「…尾形さん」
「違う…、違う違うッ！！毒で錯乱してる！！」
父に母への愛があるのか確かめたくて母を殺した。
次は自分への愛はあるのか確かめたくて勇作を殺した。
誰にも愛されない自分のような��欠けた人間��が陸軍少尉になって第七師団長になれば、奴らも同じだけ価値がないのだと証明できると思った。
それが全部、全部全部意味がなかったってこと？
「…ダメだ！！それでは…！それでは全てが間違いだったことになる！！もういい、考えるな！負ける…！これ以上考えるなッ！！」
「尾形さん」
「勇作…、アシリパ…」
「もうやめよう、尾形さん」
「A…」
ああ、本当に悪夢だ。
��無価値の証明��だなんて、笑ってしまう。
俺の今までの人生は一体…。
「私の居場所はあなたで、あなたの居場所は私なんでしょう？」
血塗れで、ボロボロの顔の女がこちらを覗き込んでいる。
俺が散々悩まされた悪夢には一切として出てこなかった癖に、今になってこの女はこうして視界を、見たくない目の前の真実を遮ってくれる。
「私は、金塊なんて、どうでもよかった… ただ…、ただあなたのそばにいられれば、それだけでよかったのに…ッ」
なんで泣くんだよ。
泣きたいのは俺の方なのに。
…お前の右腕を、お前の綺麗な羽を捥いで二度と飛べなくさせたのは俺なのに。
ああ…、でも、よかったなぁ。
俺のために涙を流す女がいる。
「全部、忘れていいんですよ… 苦しかったことも、嫌な現実も ……辛いなら私のことだって、何もかも」
勇作の愛は俺を焼いた。
俺は最後までその存在に気づくことができなかった。
Aの愛はそっと俺の目を覆った。
見たくない現実から、逃げたくなるような真実から、俺を守ってくれる。
これはきっと、ずっとそばにあったものだったんだ。
ああ、なんだ。
俺の欲しかったものは、ずっとそばにこうして存在していたじゃないか。
『兄様は祝福されて生まれてきた子どもです』
こんな単純なことに、最後まで気が付かなかったなんて。
なあ、勇作、笑えるな、心底可笑しな話だよな。
もし、来世なんてものが、もしあるとしたら、
A、今度こそお前と…。
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なお(プロフ) - 最後の結末はあの花を意識されてますか！？ (5月6日 11時) (
レス) @page46 id: b9f10e639b (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - 塩トマトさん» いつも感想とてもモチベになりました！こちらこそ長く読んでくださってありがとうございました (2月26日 16時) (レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - べちゃべちゃだいこんおろしさん» 泣いていただけてこっちも感涙です…！完結できてよかったです (2月26日 16時) (レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - 豆腐プリンさん» うわ〜いつも感想とても励みになりました！ありがとうございます (2月26日 16時) (レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
塩トマト(プロフ) - 完結おめでとうございます！ずっと素敵な文章と物語に感動と喜びと驚きとドキドキで満たされました！ありがとうございました！ (2月26日 15時) (レス) @page46 id: ce7328f6ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽなふ | 作成日時：2024年1月23日 23時
