二百五十三 ページ3
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「…お前、どうしたその愉快な面は」
「ぐ、ぐすッ…」
鼻を啜る音に、尾形はギョッと目を開いた。
それぞれ分かれて刺青人皮を追っていたAと尾形。
約束した時間をとうに過ぎて落ち合ってみればこれだ。
「うぅ… 宇佐美上等兵にやられまじだ…」
可哀想なくらいに頬を腫れ上がらせ、せっかく伸びてきた髪の毛もぐちゃぐちゃ。
あまりに悲惨な有様の女の口から出てきた言葉に、尾形は納得した。
捜査中にあの宇佐美と鉢合わせるだなんて不運も極まれりだ。
生きて帰ってこれただけでも上々である。
宇佐美が単独でこの札幌の街に来ているとは思えない。
鶴見中尉の尖兵といったところか。
「とりあえず冷やしとけ」
「…アイツの仲間がいるかもと思うと、大通りに出られなくて…」
「ハァ… 分かったよ、俺が氷もらってくるからお前はここでそうやってピーピー泣いてろ」
軍にいた時は、宇佐美に殴られても折檻されても飄々とした態度を崩さなかったような女だ。
泣きじゃくっている今のAの姿は尾形にとってはとても新鮮で、そして、なかなかどうして悪くないものであった。
尾形は現在隠れ家にしている主人のいない空き家にAを一人残し、人通りの多い通りに向かった。
八百屋でも魚屋でも、少量の氷程度であればタダで分けてくれるだろう。
ふと、なんで自分があの女のためにお使いのようなことをしなければならないのかとも思ったが、幸い今は機嫌が良い。
あの女といると変な亡霊も現れないし、何よりボコボコに腫れ上がった顔で自分に泣き縋ってくる姿には気分が良かった。
そしてAが命からがら持ち帰ってきた情報もいかんせん
ある記者から聞き出したらしい。
連日娼婦を殺してまわっている刺青囚人は外人で、ロンドンの有名な娼婦連続殺人事件と殺害現場の位置が酷似している、と。
そうなると自ずと次の事件現場も絞られてくる。
「札幌ビール工場、か」
宇佐美時重。
あの男もそこへやって来るというならそれはそれでいい。
試し撃ちの的にちょうど良い。
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なお(プロフ) - 最後の結末はあの花を意識されてますか！？ (5月6日 11時) (
レス) @page46 id: b9f10e639b (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - 塩トマトさん» いつも感想とてもモチベになりました！こちらこそ長く読んでくださってありがとうございました (2月26日 16時) (レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - べちゃべちゃだいこんおろしさん» 泣いていただけてこっちも感涙です…！完結できてよかったです (2月26日 16時) (レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - 豆腐プリンさん» うわ〜いつも感想とても励みになりました！ありがとうございます (2月26日 16時) (レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
塩トマト(プロフ) - 完結おめでとうございます！ずっと素敵な文章と物語に感動と喜びと驚きとドキドキで満たされました！ありがとうございました！ (2月26日 15時) (レス) @page46 id: ce7328f6ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽなふ | 作成日時：2024年1月23日 23時
