二百六十五 ページ15
防げなければ腕ごと切断されてしまう。
男もそれが分かっているのか、痛みに顔を歪ませながらもビールの海に飛び込んだ。
大きな影は魚影のように、スイスイとビールの海へ消えていった。
Aは共に落ちそうになっていたアシリパをすんでのところで抱き止めた。
「ぁ…、A…」
「アシリパ、杉元はどこに…」
「鯉登少尉殿！どこでありますか！」
外から聞こえてきたのは月島軍曹の声だ。
目の前で軍刀についた血を払いながら、鯉登はチラリとこちらに視線をやった。
ぐったりと力無いアシリパを抱き抱えるようにしているA。
それらの様子を一瞥すると、鯉登は声を張り上げた。
「月島ァ！こっちだ、早く来い！アシリパと…、香坂も確保したぞ月島ァ！」
そのとき、突然ビールの海が波立ちザバァ！と勢い良く姿を現したのは先ほどの長髪の大男。
背後から鯉登の胴を抱え込むと、そのまま海に引き摺り込んでしまった。
バタバタと月島が走ってきた時には、すでにそこにはアシリパとAの姿しかなかった。
「鯉登少尉殿！？…何があった？香坂」
「…アシリパ、逃げて」
「待て！」
「月島軍曹、鯉登少尉はあの樽の方へ引き摺り込まれていきました」
アシリパの背中を無理矢理に押して階段を登らせ、月島との間に入るように身を滑り込ませる。
Aが指差した方には、ビールの海の水面がブクブクと波立っているのが見える。
月島は少しの間逡巡した。
「軍曹、早くしないと少尉殿が…」
「ッ分かってる！」
顔を歪めた月島とそれを見ていたAがビールの海に飛び込んだのはほとんど同時であった。
今思い返してもこのときなぜ鯉登を捨ておいて逃げなかったのか、Aには自身の行動が理解できなかった。
そしてこれはおそらく、月島も同じだと思う。
とにかく二人は激しく水面が波立っているところまで近づき潜った。
するとそこには、男の長髪に絡め取るように巻きつかれ、必死にジタバタと抵抗している鯉登の姿が。
月島が男の顔を思い切り踏みつけ、鯉登の身体を引っ張り上げる。
それを追おうとする男に向かって、Aは一発銃弾をくれてやった。
しっかりと命中したかは定かではない。
何せビールの海の中である。
「急いで上がってください」
「アシリパはどうした！？」
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なお(プロフ) - 最後の結末はあの花を意識されてますか！？ (5月6日 11時) (
レス) @page46 id: b9f10e639b (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - 塩トマトさん» いつも感想とてもモチベになりました！こちらこそ長く読んでくださってありがとうございました (2月26日 16時) (レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - べちゃべちゃだいこんおろしさん» 泣いていただけてこっちも感涙です…！完結できてよかったです (2月26日 16時) (レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - 豆腐プリンさん» うわ〜いつも感想とても励みになりました！ありがとうございます (2月26日 16時) (レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
塩トマト(プロフ) - 完結おめでとうございます！ずっと素敵な文章と物語に感動と喜びと驚きとドキドキで満たされました！ありがとうございました！ (2月26日 15時) (レス) @page46 id: ce7328f6ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽなふ | 作成日時：2024年1月23日 23時
