二百六十三 ページ13
ドォオン！！！
至近距離で鳴った聞き慣れた射撃音に、宇佐美はカッと目を見開いた。
目の前で這いつくばっていたと思った尾形は、その体勢のまま振り返り銃を肩に乗せこちらに向けていた。
その銃口から立ち上る硝煙を認識した瞬間、足がもつれて身体を支えられなくなる。
そうか、この男どこかのタイミングで弾薬を舌で弾倉に…。
宇佐美は引き際の分かる男であった。
そうでなくては上等兵は務まらない。
もんどりを打つようにして階段を転げ落ちると、そのまま射線を切るようにして走って逃げる。
「百之助なんぞに…、構ってる場合じゃない 鶴見中尉殿に…！」
鶴見中尉はすぐそこまでやって来ている。
アシリパを捕まえていた菊田の違和感、そして道中で知った門倉の秘密、それら全てを鶴見中尉に報告しなくてはならない。
報告すれば、全てあの人がどうにかしてくれる。
必ずこれらの情報を役に立ててくれる。
撃ち抜かれたのは心臓の少し下辺り。
止血をしている暇はない、早く百之助から距離を取って、鶴見中尉に…。
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「俺もアイツも、宇佐美には手酷くやられてきたからな」
窓辺に銃口を置き、左目でピタリと照星を覗き込む。
先ほどまでとは打って変わって静まり返った尾形の周囲は、尾形の息を吐く音が響くほど静然としていた。
唯一残った左目は、今から起こることを全てスローモーションのように映し出す。
尾形は、ただ落ち着いて引き金を引くだけであった。
放たれた弾丸は建物の角から窓を二枚抜いて、その先で馬を駆けている宇佐美の心臓に寸分の狂いもなく命中した。
まさにこの瞬間射撃の神が宿ったに等しい一発であった。
「ありがとよ、宇佐美… お前の死が狙撃手としての俺を完成させた」
もうこんな包帯など無くてもいいだろう。
この右目の義眼を見たらあの女はなんと言うかな。
いや、アイツなら��左撃ちで初めて仕留めた人間が宇佐美だ��と教えてやった方が涙を浮かべて喜ぶかもしれない。
珍しく内心から湧き上がってくる高揚感に、尾形は柄にもなく邪気無く口角が上がっていた。
弾みで飛び出した義眼を「おっと！」と慌ててキャッチする。
うーん、やはり使い勝手は本物の眼球には遠く及ばんらしい。
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なお(プロフ) - 最後の結末はあの花を意識されてますか！？ (5月6日 11時) (
レス) @page46 id: b9f10e639b (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - 塩トマトさん» いつも感想とてもモチベになりました！こちらこそ長く読んでくださってありがとうございました (2月26日 16時) (レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - べちゃべちゃだいこんおろしさん» 泣いていただけてこっちも感涙です…！完結できてよかったです (2月26日 16時) (レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - 豆腐プリンさん» うわ〜いつも感想とても励みになりました！ありがとうございます (2月26日 16時) (レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
塩トマト(プロフ) - 完結おめでとうございます！ずっと素敵な文章と物語に感動と喜びと驚きとドキドキで満たされました！ありがとうございました！ (2月26日 15時) (レス) @page46 id: ce7328f6ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽなふ | 作成日時：2024年1月23日 23時
