百六十 ページ10
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運良くその場には(なぜか全裸の)スチェンカ組が駆けつけ、チカパシは谷垣と共にクズリに鉛玉をお見舞いしていた。
杉元の方も、何やら興奮した筋骨隆々の日本人の男と取っ組み合っているのが見える。
男の上半身にはもはや見慣れてしまった例の刺青が入っていた。
しばらくして杉元の動きは止まり、そのとき微かに聞こえたのは「俺ッ…、俺は、役立たず…」という唸り声のような弱音。
この鬼神の如き強さを誇る男でも、こんな悲しい声を上げるのか、と内心驚いた。
そしていつか夢の中で出会った孤独な男の子の『俺は…、出来損ない、だ』という呟きを思い出した。
似ているはずのない二人の姿が重なったような気がした。
「許してやりなさい 頑張ってるじゃないですか、そんなにボロボロになるまで」
「その通りだよ、杉元は役立たずなんかじゃない 私だって何度もあなたに助けられてきたんだから」
脱獄囚の男の包み込むような表情に感化されたのか、Aは近づいて杉元の傷だらけの背中をそっと撫でる。
もうこの男が我を忘れて暴れるとは思えなかった。
鶴見中尉と同じで、脳を負傷した弊害だろう。
殴られまくるスチェンカという競技の中で、情緒が不安定になってしまったのも仕方がないかもしれない。
「A…、俺は、アシリパさんを…」
「アシリパは強い子だから、一人でもなんとか踏ん張ってる 早く私たちが迎えに行ってあげないとね」
「ああ、うん…、そうだな お前の言う通りだ…ッ！？」
パキリと地面から嫌な音がして杉元の言葉が止まる。
Aは正気に戻った杉元と顔を見合わせた。
その瞬間地面だと思っていた下の氷が割れ、樺太の極寒の湖にAらは落っこちた。
穴のギリギリで体操選手のように踏ん張っていた鯉登であったが、湖の中からぬっと出てきたAの手に足を掴まれ敢えなく沈没した。
いや、
「うひぃいいッ！冷てえ！？」
「ざざざざ寒いッ！！」
「〜〜〜ッ！！」
「バババーニャにッ、早くッ！！」
「月島ァ！！」
「氷の上だったとは…」
なんとかツルツルの氷の上に登るも、ほとんど全裸の男たちに比べて衣服がギンギンの氷水に浸されたAは悲鳴を上げることもできず固まっていた。
死ぬ、本当に、今回ばかりは本気で死んでしまう。
なんとか月島に追い立てられるように、杉元たちについていった。
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ぽなふ(プロフ) - まるまさん» 嬉しいです〜完結まで頑張りたいです！ (11月4日 12時) (
レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - kuuualohaさん» ありがとうございます！またテンポ良く上げられたらと思います (11月4日 12時) (レス) @page12 id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
まるま - 何時も楽しく読ませてもらってます！これからも応援してます!!✨ (11月3日 22時) (レス) @page42 id: 176e021716 (このIDを非表示/違反報告)
kuuualoha(プロフ) - 更新待ってます(泣)！ (11月3日 7時) (レス) @page42 id: 8717a25739 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽなふ | 作成日時：2023年10月2日 8時
