百九十三 ページ43
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「アシリパ、教えてくれ！何を思い出したんだ？」
アシリパの表情は相変わらず固い。
こんな所で時間を食っていては、すぐに杉元らに追いつかれて金塊の暗号どころではなくなってしまう。
尾形は作戦を変えることにした。
「俺は杉元に頼まれた」
「杉元…！？」
ほら見ろ、杉元という言葉を聞くだけで目の色を変えた。
やはり自分では杉元の代わりは務まらなかったようだ。
「網走監獄で、杉元が息を引き取る直前…」
こうなったら杉元の話で同情を買うまでだ。
杉元は故郷の女に目の手術を受けさせるために金塊を欲している、と以前に鶴見中尉から聞いたことがあった。
これはアシリパも知らない、使える情報のようだ。
「アイツとは仲良くなれなかったが、道中助けられたこともあった 俺は杉元の最期の頼みを聞いてやりたい」
「その人の名前は聞けたのか？」
「あー、たしか… トメ」
『百之助、美味しい？』
ふふ、と笑ったやつれた女の姿が浮かぶ。
どういうわけか、そのときの表情だけが思い出せない。
霞む思考を振り払うように、尾形は目を瞬かせ現実に向き直った。
「他には？何を言っていた…？」
「故郷に帰りたい、と 杉元はそう言っていた」
「他には？全部教えてくれ！最後に何か食べたいとか、そういうことは言ってなかったか？」
「あ？ああ、アイツはたしか… あんこう鍋が食べたい、と」
『幸次郎様も、そんな顔して食べてらしてねぇ…』
…うるさい、さっきから一体何なんだ。
気を抜くと意識が遠くへ行ってしまいそうな感覚に、尾形は顔を歪めた。
顔には脂汗が浮かび、元々悪い顔色がさらに青白くなっていく。
「
気づくとアシリパには腕を払い除けられ、あまつさえ矢を向けられていた。
「落ち着け、アシリパ」
「近づくなッ！お前は何一つ信用できない！」
自分を見つめるその青い瞳は、メラメラと燃え沸っている。
この心優しいアイヌの少女が自分に矢をつがえるのは初めてのことだ。
そうか、つまり…。
「あーあ、時間切れかな…」
ニヴフ帽子をかぶっていることを忘れて、無意識にいつものように頭に手をやる。
強い吹雪に煽られて帽子はどこかへ飛んでいった。
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ぽなふ(プロフ) - まるまさん» 嬉しいです〜完結まで頑張りたいです！ (11月4日 12時) (
レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - kuuualohaさん» ありがとうございます！またテンポ良く上げられたらと思います (11月4日 12時) (レス) @page12 id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
まるま - 何時も楽しく読ませてもらってます！これからも応援してます!!✨ (11月3日 22時) (レス) @page42 id: 176e021716 (このIDを非表示/違反報告)
kuuualoha(プロフ) - 更新待ってます(泣)！ (11月3日 7時) (レス) @page42 id: 8717a25739 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽなふ | 作成日時：2023年10月2日 8時
