百九十一 ページ41
「やっぱりお前はAを…」
「暗号の解き方を教えてくれれば、アシリパもこの不毛な殺し合いから上がりだ アイヌのことはキロランケやソフィアに任せたらいい、お前がそんな重荷を背負うことはない」
「…じゃあどうして、キロランケニシパから離れた所で聞き出そうとするんだ？」
遠くの方で銃声が聞こえた。
といっても以前に聞こえたのよりも遥かに近くだ。
尾形は素早く立ち上がると、いつものように双眼鏡を覗いた。
しかし激しい吹雪の中、尾形の視力をもってしても視界はいつものようには追っ手を捉えられない。
アシリパの手を掴み場所を移動しながらも、双眼鏡で索敵することはやめなかった。
「＿＿＿ッ！」
アシリパがこちらに向かって何かを言っているのがわかる。
しかし尾形の耳には何一つとして届いていなかった。
双眼鏡で捉えたのは、怒り狂った様相の杉元と、そして＿＿＿＿。
「追っ手か？」
杉元が生きている予感はしていた。
あの不死身の杉元だ、しっかりと頭蓋を撃ち抜けたという手応えがない限り生きていると思っていた。
しかし今尾形が口角が上がるのを堪えられないのは、その隣で必死にこちらへ歩いてくる香坂Aの姿だった。
心のどこかで生きていればいいと、そして生きているなら俺を追ってくればいいと呪詛のように念じていた。
この極寒の地で極限状態にまで追い詰められても、目に映るのはかつて撃ち殺した異母弟の悪霊ばかり。
俺を恨んで取り憑くことすらしてくれないのか、と子どもの癇癪のような怒りが香坂Aに湧いたことすらあった。
生きていたのなら取り憑けないのにも納得だ。
俺に復讐しに来たか。
だがしかし、雪と氷で視界が悪いのはお互い様だ。
この距離から狙撃合戦をするのは互いに不毛だろう。
「…来い、アシリパ」
あの女は今どんな顔をしている？
俺への怒りか、それとも緊張か、それとも…
『…そのときがきたら、あなたとは離れ離れなんですか？』
いつの日かあの女がそう尋ねてきたときの、物憂げな表情が突然思い出される。
…いや、もうあのときとは状況が違う。
自分を撃ち殺そうとした男だ、香坂Aは憎んでいるに違いない。
遥々こんなところまで殺しにくるほどに。
間違ってもあのときの縋るような表情を、もう自分の前で浮かべることはないのだ。
あの女が縋るのはもう自分ではなく…、
隣の杉元だろう。
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ぽなふ(プロフ) - まるまさん» 嬉しいです〜完結まで頑張りたいです！ (11月4日 12時) (
レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - kuuualohaさん» ありがとうございます！またテンポ良く上げられたらと思います (11月4日 12時) (レス) @page12 id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
まるま - 何時も楽しく読ませてもらってます！これからも応援してます!!✨ (11月3日 22時) (レス) @page42 id: 176e021716 (このIDを非表示/違反報告)
kuuualoha(プロフ) - 更新待ってます(泣)！ (11月3日 7時) (レス) @page42 id: 8717a25739 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽなふ | 作成日時：2023年10月2日 8時
