百九十 ページ40
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流氷の上を橇で進むこと数時間、天候は荒れ、激しい流氷の動きに犬たちの足は止まりつつあった。
「このでこぼこの流氷原を犬橇で進むのは一苦労だぞ！」
「天候もますます悪くなってる！」
「杉元、私もこのまま進むのは危険だと思う！」
月島軍曹、谷垣、Aが口々に先頭を進む杉元に呼びかける。
はやる気持ちは痛いほどよくわかる。
だがしかし、ここは樺太の流氷の上なのだ。
吹き荒れる天気と波によって足元の氷は絶えず動き、とても不安定であった。
「さっきの爆破を見ただろう？すぐ近くにいるはずなんだ！今なら追いつける！」
杉元は焦ったように叫び、とうとう皆の制止の声を無視しリュウと共に流氷原を駆け出した。
「オイ、杉元ッ！」
「…もう、あの脳筋ッ！」
「なッ、オイ香坂お前まで行くな！」
「戻らんかバカタレがッ！」
Aは歯をギリリと食いしばって杉元の後を追った。
わずかに残った理性は、この吹雪の中歩き回るのは危険だ、何か遮蔽物のある場所を探して避難すべきだ、と言っている。
しかし一方で、杉元を追わなければ！尾形はすぐそこにいる！という激情がAの足を突き動かしていた。
ああ、いつからこんなに馬鹿になっちゃったんだろうな。
自嘲めいた笑みが思わず溢れた。
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「アシリパお前… もしかして、
キロランケは尾形に伝えていた。
この旅はアシリパの記憶の奥底に眠っている刺青の暗号の鍵を呼び覚ますためのものだと。
そしてアシリパは先ほどはっきりと、「あッ」と何かを思い出したかのように目を見開いていた。
おそらく自分しか気づいてはいないだろう、という確信が尾形にはあった。
「アシリパ、俺に教えてくれないか？俺はここまで命を張った分の報酬が欲しいだけだ 国を作れるほどの金なんて俺はいらん 独り占めしたところで争奪戦の中心になりかねん 俺は…」
目線を合わせ、アシリパの揺れる青い瞳をジッと見つめる。
「俺は分け前を少し貰えるだけで良かった、アイツと… 二人で慎ましく暮らせる分だけ貰えればそれで良かった」
ここであの女の話を引き合いに出すのは卑怯だろうか。
さあ、狙撃手というのは得てして卑怯なものなのだ。
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ぽなふ(プロフ) - まるまさん» 嬉しいです〜完結まで頑張りたいです！ (11月4日 12時) (
レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - kuuualohaさん» ありがとうございます！またテンポ良く上げられたらと思います (11月4日 12時) (レス) @page12 id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
まるま - 何時も楽しく読ませてもらってます！これからも応援してます!!✨ (11月3日 22時) (レス) @page42 id: 176e021716 (このIDを非表示/違反報告)
kuuualoha(プロフ) - 更新待ってます(泣)！ (11月3日 7時) (レス) @page42 id: 8717a25739 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽなふ | 作成日時：2023年10月2日 8時
