百八十九 ページ39
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犬橇を最速で走らせて辿り着いたアレクサンドロフスカヤ監獄には火の手が上がり、中は怒号と喧騒で溢れかえっていた。
その原因はAにもすぐにわかった。
刑務所の外壁が爆破され、大きな穴が開いていたのだ。
「一足遅かったが、奴らは近いぞ」
キロランケは陸軍の元工兵。
賢い彼ならば、この程度の爆弾を作ることなど容易なのだろう。
月島の言う通り、アシリパたちの足取りに着実に迫ってきているのは確かだ。
杉元がリュウにキロランケのマキリの臭いを辿らせると、リュウは流氷で埋め尽くされた海の方へ駆け出した。
まさか、彼らは流氷の上を渡って行ったというのだろうか。
「リュウがあっちというなら俺は信じるぜ」
「…たしかに、今までの経験上リュウが間違ってたことは一度もないね」
リュウは優秀な猟犬なのだ。
先遣隊一行が心を決めて流氷の上に足を一歩踏み出そうとしたそのとき、チカパシとエノノカが「「うわーッ！！」」と大きな叫び声を上げた。
何事かと振り返ると爆破による穴の中から、縞々模様の大きな虎がのそりと出てきた。
ヒュッと息を飲むよりも早くAは弾を装填すると、ギラついた目の獣に向かって銃の引き金を引いた。
パンッ！！パンッ！！
二発速射するも虎はすぐに顔を穴の中に引っ込めると、逃げていってしまった。
襲う気が失せたのならそれでもいい。
北海道では見かけることのない獣の登場に心臓は早鐘を打っていたが、Aの最優先事項は尾形たちである。
「ビビった…！助かったぜA」
「どういたしまして それより急ごう」
「おう！」
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ピタッと足を止めた尾形を見上げ、アシリパは眉を顰める。
「どうした？尾形」
自分たちが渡ってきた流氷の道。
その向こうから木霊のようにうっすらと反響してきた銃声があったように聞こえた。
それは自分が持っている三八式と同じような音ではあったが、並の兵士ではこの手動の歩兵銃を二発も速射することは不可能なはずだ。
つまり先ほどの音は、自分たちが来た方角に手練れの銃の使い手がいるということの証明であった。
「………まさか、な」
そんなはずはない、どれだけ過去の亡霊に憑き纏わらせるつもりなのか、と尾形は自身を諌めた。
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ぽなふ(プロフ) - まるまさん» 嬉しいです〜完結まで頑張りたいです！ (11月4日 12時) (
レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - kuuualohaさん» ありがとうございます！またテンポ良く上げられたらと思います (11月4日 12時) (レス) @page12 id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
まるま - 何時も楽しく読ませてもらってます！これからも応援してます!!✨ (11月3日 22時) (レス) @page42 id: 176e021716 (このIDを非表示/違反報告)
kuuualoha(プロフ) - 更新待ってます(泣)！ (11月3日 7時) (レス) @page42 id: 8717a25739 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽなふ | 作成日時：2023年10月2日 8時
