百八十四 ページ34
ピシリ、と空気が凍った。
鯉登がAに対して、とうとう核心を突いたのである。
「前に私は��お前の思ってることをそのまま尾形に言え��と言ったがな、そろそろはっきりさせるべきだろう」
「…何を、ですか？」
「奴らに追いついてお前が尾形との対話という望みを叶えたとき、果たしてどう出るつもりなのか」
自分だって、樺太に来てからそのことを考えない日はなかった。
尾形たちに追いついて、「なんで置いてったんだ」「あの櫛をくれたじゃないか」って、そう怒ってやる。
それで、尾形から本音を引き出して、それで…、それで？
「私たちは随分とお前に考える時間をやったはずだ」
鯉登の真っ直ぐな鋭い視線が、Aを責め立てるかのように身体に突き刺さった。
助けを求めて見回しても、杉元も、月島も、その探るような目は鯉登と同じだった。
Aの固く握られた右手に気がついたのか、杉元はフッと目元を緩めると言う。
「心配すんな、尾形もキロランケも俺たちが殺す Aはただアシリパさんと白石をその銃で守ってくれりゃいい」
「それはッ…」
杉元も鯉登も、黙っている月島や谷垣だって、尾形を殺すことに一切の躊躇も無いだろう。
これだけの兵士たちを相手に、いくら尾形といえども無傷で済むはずがない。
ボロボロの身体で、夥しい量の血を流して絶命する尾形の姿が浮かぶ。
嫌だ。
それだけは絶対に嫌だった。
「尾形さん、は…、殺させない」
口をついて出てきた言葉に、皆が身じろぐのがわかった。
「あの野郎が大人しく捕まるタマだと思ってんのか？」
「香坂一等卒、選択を間違えるなよ」
今まで黙って成り行きを見守っていた月島が発した言葉は、重苦しいものであった。
軍の規則を遵守する月島軍曹らしい。
Aの身柄の保証は今、鶴見の命を受けた月島が左右すると言っても過言ではないのだ。
「それでも…、私は尾形さんを殺されるわけにはいきません もちろん皆さんのことも害する気はない」
皆の視線は痛いほど伝わってくる。
��そんな甘い考えでやり過ごせると思うな��と、そう言うんだろう。
それでもAは自分の中に芽生えたその甘い理想を打ち消すことができないでいた。
その様子を知ってか鯉登は呆れた様にため息をついた。
「泥棒猫は撃ち殺す …お前も覚悟を決めるんだな」
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ぽなふ(プロフ) - まるまさん» 嬉しいです〜完結まで頑張りたいです！ (11月4日 12時) (
レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - kuuualohaさん» ありがとうございます！またテンポ良く上げられたらと思います (11月4日 12時) (レス) @page12 id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
まるま - 何時も楽しく読ませてもらってます！これからも応援してます!!✨ (11月3日 22時) (レス) @page42 id: 176e021716 (このIDを非表示/違反報告)
kuuualoha(プロフ) - 更新待ってます(泣)！ (11月3日 7時) (レス) @page42 id: 8717a25739 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽなふ | 作成日時：2023年10月2日 8時
