百八十三 ページ33
灯台のレンズを拭き上げなんとか点す。
あとは光を見つけた杉元らが来れるよう祈るのみである。
「このスーシュカとかいう菓子パン、お茶受けにとても合う」
「パリパリしていて美味しい」
灯台の下で暮らしていたのはロシア人の老夫婦で、二人は温かいお茶と菓子まで振舞ってくれた。
鯉登とAは椅子に並んでスーシュカを頬張る。
そうして久々の甘味を楽しんでいると、ガタガタと音がしてようやく杉元、谷垣、チカパシらが到着した。
全員顔まで凍っていて凍死寸前のようであった。
「杉元！みんな、良かった！」
「ペチカの上に行け、一番暖かい」
「フフ、虫みたい」
心優しい灯台夫婦のおかげで猛吹雪を凌げた先遣隊一行はさらに北上し、樺太アイヌのある集落に滞在していた。
コタンのアイヌたちにアシリパらの写真を見せて回るも、イマイチ反応が悪い。
彼らはこのコタンには立ち寄っていないということだろうか。
その日の聞き込み調査は諦めて、翌日の出発に備えて貸してもらったチセで休みを取る一行。
皆で夕飯に囲炉裏を囲んでいると、エノノカが呟いた。
「聞いてチカパシ、昨日メコオヤシが出たんだって」
「何それ？怖いやつ？」
「樺太アイヌの昔話に出てくる猫の化け物」
特に話すこともなくなり、Aら大人たちもなんとなくエノノカの話に耳を傾けていた。
「毛皮に赤と白の斑がある、犬みたいに大きな猫なの」
「オオヤマネコだな」
「ふん、尾形百之助じゃないのか？」
馬鹿にしたような鯉登の言葉に、ピクリとAの箸を持つ手が揺れた。
「とうとう奴らに追いついたか」
「なんで尾形なんだよ？」
「軍で聞いたんだ、��山猫の子は山猫��」
尾形百之助と初めて出会ったときにはすでに彼は上等兵という身分ではあったが、新参者のAから見ても尾形はだいぶ軍の中で浮いているように見えた。
もちろん彼は無愛想ではあったが確実に有能ではあったし、軍内での最低限のコミュニケーションは取っていたため、もっぱら陰口のようなものではあったが。
母親が芸者であることを��山猫��の隠語でもってよく揶揄されていたが、とうの本人はどこ吹く風であったのを覚えている。
「あの性格だ、嫌っている人間も少なくない 私も大嫌いだし、香坂だってどうせすぐ目を覚ますはずだ」
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ぽなふ(プロフ) - まるまさん» 嬉しいです〜完結まで頑張りたいです！ (11月4日 12時) (
レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - kuuualohaさん» ありがとうございます！またテンポ良く上げられたらと思います (11月4日 12時) (レス) @page12 id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
まるま - 何時も楽しく読ませてもらってます！これからも応援してます!!✨ (11月3日 22時) (レス) @page42 id: 176e021716 (このIDを非表示/違反報告)
kuuualoha(プロフ) - 更新待ってます(泣)！ (11月3日 7時) (レス) @page42 id: 8717a25739 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽなふ | 作成日時：2023年10月2日 8時
