百八十一 ページ31
__________________________________
『狙撃手は卑怯で姑息、だからもし敵兵に捕まれば惨たらしく殺される… って本当なんですか？』
『狙撃手ってヤツは、元来臆病者のくせして実戦では一度で多くの敵兵を殺せる 歩兵連中からすれば、そりゃさぞ憎くて憎くて仕方がないだろうよ』
『ふーん じゃあもし私が捕虜にでもなったら、尾形上等兵に撃ち殺してもらうとしましょう』
『…ハッ、ずいぶんと酔狂なこって』
『だって正直、尾形上等兵の狙撃はとても綺麗なので もし殺されるなら、酷い見せしめを受けるよりそっちの方が何倍もマシです』
『…お前に希死念慮があったとは 知らなかったよ』
___________________________________________________
あのとき『そこまでは言ってないです』と少しだけ笑った香坂Aの表情を、今になって鮮明に思い出した。
どうして今なのだろうか。
尾形百之助はクリアになった思考回路の全神経を手の中の三八式歩兵銃に集中させ、そしてその引き金を引いた。
命中した。
ロシアのスナイパーとの一晩にも及んだ静かなる戦いに、ようやく勝利したのだ。
「お前の言っていた、
誰もいるはずがない、真っ白な虚空に向かって声をかける。
視界が揺らぐ。
手足に力が入らない。
音も光も吸収してしまう一面の雪景色に、飲み込まれてしまいそうだった。
誰もいない。
何もない。
いや、あるはずがないのだ。
全て自分のこの手で壊してきたのだから。
ガクンと雪の上に膝と手をついても、真っ白な雪は血の色に染まることはなかった。
ただどこまでも白く、悍ましいほどに尾形を蝕んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 142人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽなふ(プロフ) - まるまさん» 嬉しいです〜完結まで頑張りたいです！ (11月4日 12時) (
レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - kuuualohaさん» ありがとうございます！またテンポ良く上げられたらと思います (11月4日 12時) (レス) @page12 id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
まるま - 何時も楽しく読ませてもらってます！これからも応援してます!!✨ (11月3日 22時) (レス) @page42 id: 176e021716 (このIDを非表示/違反報告)
kuuualoha(プロフ) - 更新待ってます(泣)！ (11月3日 7時) (レス) @page42 id: 8717a25739 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽなふ | 作成日時：2023年10月2日 8時
