百五十四 ページ4
_______________________________
「Давай！Давай！(いけいけ！)」
「Бейих！Бейих！(殺せ！殺せ！)」
唸るような歓声と熱気、そして男たちの熱いフェロモンに当てられ、Aは眩暈がするようだった。
そのスチェンカが行われているという小屋に案内されたは良いものの、そこでは裸の男たちが一列に向かい合って並んでただひたすらに殴り合っている地獄のような光景。
軍の宴会でもここまで酷くはなかった気がする。
ロシアの伝統的な競技であるらしいスチェンカは男たちを魅了する何かがあるらしく、客席は満員、大金を賭けた男たちの歓声や怒号が止むことはなかった。
「スチェンカやるしかねえのか…、俺たち」
「俺たち？」
杉元の言葉に、解せない様子の月島。
店主から聞き出した話はこうである。
日本から来た刺青を持った男が、ある日スチェンカを賭け事の対象にしたところ、この村で爆発的に流行した。
そしてその男はときたま観客として試合を観戦したり、興が乗れば自身が出場することもあるらしい。
そしてその条件は、彼が興味を持つような強い男がいること。
「試合に誘き出せば刺青の確認ができる」
「尾形さんたちもスチェンカやったのかな」
ふと気になって呟くが、「どうせ勝てずに諦めたんだろ」と一蹴されてしまう。
まあたしかに、いくら刺青のためとはいえ尾形がこんな馬鹿げた余興に付き合うはずは…、いや、意外とやるかも。
そんなことを考えていると、鯉登がムスッとした表情で口を挟んだ。
「出るのは杉元だけで十分だろう」
「そもそもお前が殴ったのが悪いんだぞ」
加勢した谷垣も正論をかます。
出場予定のないAとしては正直どうでもよかった。
「あ？連帯責任だろ」
「Вот зтoт человек буде т драться(出るのはその男一人だけでいい)」
「一人抜けた穴を埋めればいい、と言っているぞ」
まあ試合に出られなくなったのは杉元が殴り倒した一人だけだし、と話がまとまりかけたところで月島が「は？」と低い声で呟いた。
「どうしました？軍曹」
「…お前ら日本人だけではロシア人には勝てない、もし出るならそっちの女でも賭ければ客は盛り上がるだろう …だと？」
「あ？」
「この薄らハゲ…」
「もう日露戦争を忘れたか」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 142人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽなふ(プロフ) - まるまさん» 嬉しいです〜完結まで頑張りたいです！ (11月4日 12時) (
レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - kuuualohaさん» ありがとうございます！またテンポ良く上げられたらと思います (11月4日 12時) (レス) @page12 id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
まるま - 何時も楽しく読ませてもらってます！これからも応援してます!!✨ (11月3日 22時) (レス) @page42 id: 176e021716 (このIDを非表示/違反報告)
kuuualoha(プロフ) - 更新待ってます(泣)！ (11月3日 7時) (レス) @page42 id: 8717a25739 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽなふ | 作成日時：2023年10月2日 8時
