百七十八 ページ28
「オイ香坂、ちょっと来い」
舞台裏に戻ると、厳しい顔つきの月島軍曹に腕を引かれる。
「な、なんですか？別に少しぐらい勝手やったって良いでしょう、今回の主役は私じゃな…」
「そうじゃない」
勝手に銃を撃ちまくったことを咎められるのかと思ったが、月島に連れられてやって来たのは反対側の舞台袖。
次の演目である鯉登の綱渡り用の大掛かりな道具たちが、これからステージに設置されようとしているところであった。
月島は少女団のフリルの付いた可愛らしい衣装の懐から一枚の写真を取り出すと、Aに渡した。
よく見ると、軍帽を被りサーベルを携えた鶴見中尉の写真であった。
「これは一体？」
「お前も練習のとき見ただろう、このままでは鯉登少尉が目立ちすぎる 当初の目的通り杉元を立たせるためには、悪いが少尉殿には失敗してもらわなければ」
「…なるほど、軍曹殿もお人が悪い」
「優先すべきは目的の達成だろう」
鯉登が宝物のように大事にしている写真をくすねてくるとは、上官に忠実な月島にしてはなかなかやる。
何も知らない鯉登が演目中に写真を見つけて大発狂するところまで想像できてしまい、ニヤつく顔を抑えながらAは月島と協力して高い位置にある縄の上にそれを設置した。
そしてとうとう始まった鯉登音之進による��坂綱��。
やはり、というべきか、Aらの予想通り鯉登は写真を見つけるなり「キエエエエエエエェェッ！！！」と猿叫を上げながら写真を追いかけ舞台中を横断、全ての演目に乱入し見事無傷で写真をゲットした。
一瞬空中を泳いでいた気すらする。
予想は大きく覆され、失敗させるどころか薩摩の奇行子の人間離れした芸に会場中がスタンディングオベーションとなってしまった。
「キエエエエエッ！！きっと杉元だな！？卑怯な奴め！……って、アレ？どういうことだ！同じ写真が…」
鯉登は舞台袖に戻ってくるなり自身の背嚢を漁ると、素っ頓狂な声を上げた。
面倒くさいが、月島と共謀して反抗に及んだのは事実だ。
Aは重い腰を上げて鯉登にネタバラシをしに行く。
「犯人は杉元じゃなく、私と月島軍曹ですよ」
「なッ、香坂と月島ァ！？」
さすがに月島軍曹が鯉登少尉の持ち物を盗むわけがないか、などと納得する。
「杉元を目立たせるために俺たちが手を汚したつもりでしたが、裏目に出てしまいましたね」
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ぽなふ(プロフ) - まるまさん» 嬉しいです〜完結まで頑張りたいです！ (11月4日 12時) (
レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - kuuualohaさん» ありがとうございます！またテンポ良く上げられたらと思います (11月4日 12時) (レス) @page12 id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
まるま - 何時も楽しく読ませてもらってます！これからも応援してます!!✨ (11月3日 22時) (レス) @page42 id: 176e021716 (このIDを非表示/違反報告)
kuuualoha(プロフ) - 更新待ってます(泣)！ (11月3日 7時) (レス) @page42 id: 8717a25739 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽなふ | 作成日時：2023年10月2日 8時
