百五十三 ページ3
何だか雰囲気が悪い。
南樺太はロシアの中でも荒くれ者が集まる地でもある。
酔っ払ったロシア人がひしめく酒屋では、帝国軍人丸出しの自分たちでは相手にしてくれないかもしれない。
すでに酔っ払いのうちの一人に胸ぐらを掴まれている杉元を横目に、Aは早くこの場を去りたくて後退る。
「俺に触ったらぶっ飛ばすとコイツに伝えろ、月島軍曹」
「杉元、喧嘩沙汰を起こすと面倒になるよ」
「わかってる」
Aの忠告も虚しく、次の瞬間には杉元の胸ぐらを掴んでいたロシア人は酒場の床に沈められた。
素面とは思えない手の早さである。
いきり立った酔っ払いたちでは話にならないため、一行は早々に酒場を立ち去った。
それからすぐ慌てた様子のエノノカとチカパシがこちらへ駆け寄ってくるのが見える。
一体どうしたと言うのだろう？
荒事から遠ざけ、二人には犬橇の番を頼んでいたはずである。
「い、イヌ！盗られた！！」
「…オーマイガー」
思わず漏れた気の抜けた言葉に、月島が嗜めるようにチラリとこちらに鋭い視線を向ける。
一行の隙を盗んで橇の先頭の犬を攫ったのは、やはりと言うべきか先ほどの酒場の店主であった。
とてつもない殺気を放つ軍人たちに囲まれ多少狼狽えながらも、店主は杉元のせいだという主張をする。
何やら、杉元が先ほど殴り倒した酔っ払いの男がなんとかと言う賭けの対象だったらしい。
犬を返して欲しければ、男の代わりにその賭けに出ろという話だった。
命が惜しければ余計な手間を取らせずに犬を返せ、と絶対零度の表情で言い返した月島に対し、しかし店主は一歩も引かず、あまつさえ「キロランケたちがこの賭けに出場する刺青を入れた男を探していた」という新情報を出してきた。
この店主は相当その賭けにご執心のようだ。
「脱獄囚は樺太にまで渡っていたのか」
「そのスチェンカ…？とやらの賭けにその脱獄囚も参加するというのか？」
「可能性はあるそうです」
刺青を持った脱獄囚がこんな所で何をしているんだ、とツッコみたくはなるが、これは渡りに船だ。
ウイルクが殺された今となっては刺青人皮は金塊ゲットのための唯一の道と化しており、アシリパを奪われたままの現状ではやはり刺青を集めておくのは悪いことではない。
杉元め、余計なことをしてくれたと思っていたが何事もどう転ぶかわからないものである。
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ぽなふ(プロフ) - まるまさん» 嬉しいです〜完結まで頑張りたいです！ (11月4日 12時) (
レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - kuuualohaさん» ありがとうございます！またテンポ良く上げられたらと思います (11月4日 12時) (レス) @page12 id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
まるま - 何時も楽しく読ませてもらってます！これからも応援してます!!✨ (11月3日 22時) (レス) @page42 id: 176e021716 (このIDを非表示/違反報告)
kuuualoha(プロフ) - 更新待ってます(泣)！ (11月3日 7時) (レス) @page42 id: 8717a25739 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽなふ | 作成日時：2023年10月2日 8時
