百六十七 ページ17
カランと包丁が地面に転がる音。
鈍い痛みが腕を襲ったのはそれからすぐ後のことであった。
「ぐッ…、うぅぅ！」
「ククク…、ハッハッハッハッハ！いや実に面白い！月島、そろそろ離してやれ」
目の前の男は一瞬キョトンと目を見開いただけで一切動かず、Aは背後にいた小柄な軍人に包丁を持つ手を蹴飛ばされ地面に引き倒されている。
ギチギチと捻じ曲げられていた腕が少し緩み、Aはハッハッと浅く呼吸をすることが許された。
両親の仇を取ることすらできなかった自分は、本当の本当に不肖の娘なのだろう。
「君は先ほど我々の仲間の銃を奪って一人撃ち殺し、そして今度はこの私を道連れに死ぬつもりだったのかね？」
「鶴見中尉、この子どもは危険です まだどこに凶器を隠し持ってるか…」
「まあ待て、処分する前にいくつか質問がしたい …それで君、両親は君にとってそんなにも思い入れのある存在なのかな？」
「…親に思い入れのない子どもなんていない 殺されたのなら仇を討つのが普通でしょ」
食いしばった歯から絞り出すように言葉を吐き出すと、ギリッと体を押さえつける力が強くなったような気がした。
何か癪に障るようなことでも言ったか、と思って自身に馬乗りになる男を見上げるもその顔は相変わらず能面のようで、何を考えているのか読み取れない。
目の前の軍人に視線を戻すと、こちらを面白がるように吟味している目と合った。
「それは君の本心ではないな 親を愛すのが普通、殺されたら悲しむのが普通、仇を討つのが普通…、君は全て��普通��を演じているだけに過ぎない」
「そんなこと…！」
「なら私が当ててやろう！君は父君と母君が死んで内心嬉しくて仕方がないし、ざまあ見ろとすら思っている 違うかね？」
「なッ…！」
目の前が怒りで一瞬真っ赤に染まった。
いや、これは怒りではない。
本心を言い当てられた、恐怖心？
「品行方正で敬虔たる神の遣い、だなんてよくも言ったものだ 君はこんなにも汚らしい
ヒュッと息を飲んだ。
どうして、こんな奴に、見通されているのか。
長年抱いていた苦悩に簡単に答えを出され、Aはもう何も言えなくなった。
「良いことを教えてやろう」
気づくと鶴見は地面に押さえつけられているAのそばに片膝をつき、そっと頭を撫でながら耳に顔を近づけていた。
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ぽなふ(プロフ) - まるまさん» 嬉しいです〜完結まで頑張りたいです！ (11月4日 12時) (
レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - kuuualohaさん» ありがとうございます！またテンポ良く上げられたらと思います (11月4日 12時) (レス) @page12 id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
まるま - 何時も楽しく読ませてもらってます！これからも応援してます!!✨ (11月3日 22時) (レス) @page42 id: 176e021716 (このIDを非表示/違反報告)
kuuualoha(プロフ) - 更新待ってます(泣)！ (11月3日 7時) (レス) @page42 id: 8717a25739 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽなふ | 作成日時：2023年10月2日 8時
