百六十六 ページ16
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さらに遡ること、香坂Aが入隊するよりももっと前＿＿＿。
中国、山東省の端にある閉塞的な村。
轟々と業火に焼け尽くされた自らの故郷を、Aは見知らぬ日本軍人に手を引かれて歩いていた。
そこかしこから上がる悲鳴や逃げ惑う人々の喧騒は、いつしかほとんど聞こえなくなっていた。
幼いAでは言い表し難い絶望感と喪失感の中、テキパキと瓦礫を掻き分けて進む軍人たちに連れられていく。
「君の父君と母君のことだが…」
軍人たちの野営地であろう場所に到着すると、Aの手を引いていた軍人がくるりと振り返り、人の良さそうな笑みで喋りかけてきた。
「はっきり言って、君にとっては二人とも良い親ではなかったな 危険な宗教思想に染まりきり、村全体を皆殺しの憂き目に追い込んだ」
両親はこの閉塞的な村で密かに信仰されていた宗教の教祖であった。
そしてAはその娘であり��神の御心を伝う子��として崇め称えられてきたが、両親から言わせればAは不肖の子であった。
人々の共感を得、その心の隙間に漬け込むことに長けた両親ではあった。
しかし我が子の心の機微には一切として気づかず、また注意を払うこともなかった。
「これから列強諸国と対峙していくのに必須となる大東亜共栄圏… 大きな政策転換機を迎えている大日本帝国に、中国から得体の知れない宗教を輸入されては困る 須く弾圧せねばなるまい、それこそ信者の一人まで根絶やしに …な？」
Aは未だにぼんやりと霞がかった思考をなんとか巡らせ、背後に立つ無表情の小柄な軍人をチラリと見上げた。
先ほどこの男が言っていた『あのくらいの年齢なら、今起きていることも理解しているでしょう』という言葉を思い出す。
一族郎党村人も含めて皆殺し、これが今さっきAの目の前で起こったことである。
あの村から生き残ったのは唯一自分だけ。
Aはハッと自嘲気味に笑った。
「それじゃあ最後は娘の私だけってこと…？」
「そういうことだ」
「さすれば��神の御心を伝う子��が死ぬ前に一つ、あなたたちに神託を授けよう」
目を瞬かせている目の前の紳士然とした軍人に、叩きつけるように高らかに叫ぶ。
袖口に隠し持っていた包丁を振り翳しながら。
「地獄に堕ちよ！！」
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ぽなふ(プロフ) - まるまさん» 嬉しいです〜完結まで頑張りたいです！ (11月4日 12時) (
レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - kuuualohaさん» ありがとうございます！またテンポ良く上げられたらと思います (11月4日 12時) (レス) @page12 id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
まるま - 何時も楽しく読ませてもらってます！これからも応援してます!!✨ (11月3日 22時) (レス) @page42 id: 176e021716 (このIDを非表示/違反報告)
kuuualoha(プロフ) - 更新待ってます(泣)！ (11月3日 7時) (レス) @page42 id: 8717a25739 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽなふ | 作成日時：2023年10月2日 8時
