百六十五 ページ15
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「尾形、何を見ているんだ？」
背後から突如かけられた声に、不意を突かれた尾形は表情に出さずとも驚いた。
声の主であるアシリパは、よいしょと尾形の隣に腰掛ける。
夜も更けた、子どもはもう寝る時間だ。
「いや、別に」
「別にじゃない、今何か隠しただろッ」
「やめろ」
「見せろッ」
尾形の抵抗も虚しく、アシリパはサッと外套の中に隠された尾形の手の中にあるものを暴いた。
キロランケと白石もまだ寝つけないのか、二人の諍いを盗み見ている。
アシリパはそれを見るなり、わかりやすく目を見開いた。
「お前、これ…」
尾形の手にあったのは、もう折れ曲がってクシャクシャになった一枚の写真であった。
たしか土方らと共に北見の町の写真館で撮ったものだ。
写真の中で固い表情を浮かべる尾形とAを見て、アシリパは思わず目の辺りが熱くなり、続いて視界が滲んでくるのがわかった。
自分と杉元も、同じように写真を撮ったことを思い出す。
「悪かった…」
突然の謝罪の言葉に、尾形は怪訝そうにアシリパを見る。
「お前だってAを失って辛いはずなのに、私は… もしかしたらお前が杉元を、なんて…！」
ポロポロと綺麗な涙を流す目の前の純真な少女に、尾形は胸の奥が疼くような感覚を覚えた。
アシリパは聡明で、気高く、そしてあまりにも愚かだ。
彼女の勘の良さをもってすれば、自分が杉元たちを狙撃した可能性に行きつかないはずがない。
しかしそれでもその真っ直ぐな正しさが、真実への道を邪魔している。
尾形はまた別の女のことが脳裏に浮かんできた。
初めて出会ったときは弱々しく、鶴見中尉の愛玩動物かとすら思ったものだ。
しかしその認識が変わったのはそれからすぐ、宇佐美上等兵を痛めつけたときのAのその仄暗い笑みを見たときだ。
この女は
目的のためなら取り繕わず己の手を汚せるし、そのことに罪悪感を持たない欠けた人間だ。
まるで自分を映し出すような女のその真っ黒で濁った瞳を気に入っていた。
それがいつの日かその瞳に光が灯る、だなんて誰が予想できた？
それもこれも、杉元や目の前で涙を拭うこの少女のせいだ。
香坂Aを今さら陽の下に連れ出そうなどと、大それたことをするから、俺がこの手で終わらせてやったんだ。
ズキリ。
何処かが痛む音がした。
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ぽなふ(プロフ) - まるまさん» 嬉しいです〜完結まで頑張りたいです！ (11月4日 12時) (
レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - kuuualohaさん» ありがとうございます！またテンポ良く上げられたらと思います (11月4日 12時) (レス) @page12 id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
まるま - 何時も楽しく読ませてもらってます！これからも応援してます!!✨ (11月3日 22時) (レス) @page42 id: 176e021716 (このIDを非表示/違反報告)
kuuualoha(プロフ) - 更新待ってます(泣)！ (11月3日 7時) (レス) @page42 id: 8717a25739 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽなふ | 作成日時：2023年10月2日 8時
